第411話 俺たちも結婚することにしたよ
「村長、俺たちも結婚することにしたよ」
「えっ、ランドくんもっ?」
同い年のアマゾネスを射止めたランドくん。
彼もまた、ノエルくんに続いて結婚してしまうそうだ。
「だ~りん、ずぅっと一緒だよぉ♡」
「そうだねぇ、はにぃ~♡」
……何だろう。
チョレギュさんじゃないけど、目の前でイチャイチャされると、確かにイラっとくるよね。
そしてこれはノエルくんとランドくんだけでは終わらなかった。
村人とアマゾネスの結婚ラッシュになったのだ。
お互い明確に結婚を意識してカップルになったこともあって、二十人もいたアマゾネスたち全員が、あっという間にゴールインしてしまったのである。
……もちろん一人を除いて。
「男おおおおおおっ! あたいに男をおおおおおおおおおっ!」
チョレギュさん、このまま本当に妖怪になってしまうかもしれない……。
「それにしても、ランドくんは十七歳……年齢の近い人たちが、どんどん結婚していく……」
さすがに僕より年下の結婚はまだないけれど、なんだか少し不安を覚えてしまう。
そもそもこの世界、十二歳で成人だし、みんな結婚が早いのだ。
大半は十代のうちに結婚してしまう。
「で、でも、二十代や三十代で婚活してる人だっているしね。ガイさんは三十近いし、ディルさんやマンタさんは三十代だ」
フィリアさんに至っては百五歳での結婚だ。
……エルフはあまり参考にならないけど。
とにかく、焦る必要なんてないだろう。
そう思っていたら、
「ルーク様も春になれば十五歳です。そろそろ(わたくしとの)結婚を考える時期でしょう」
「そ、そうかな……」
「そうよ! 十五歳なら、むしろ遅いくらいよ!(私はもう十八になっちゃうし! どこかのおばさんよりは全然マシだけど)」
「セレンまで……」
二人から同時に指摘されてしまう。
「でも、相手もしないし……」
「いますが?(ここに)」
「いるけど?(ここに)」
な、なんか二人から物凄い圧が……。
「じゃあ、フィリアと同じように、魔境の森縦断耐久レースで決めたらどうかしら?(森で何度も狩りをしてるし、これなら確実に優勝できるわ!)」
「却下」
セレンの提案を、ミリアが一蹴する。
「何でよ!?」
「夫ならともかく、嫁を決めるのにそんな脳筋な方法で良いわけありません。ルーク様にゴリラ嫁でも嫁がせる気ですか? むしろお忙しいルーク様に代わって、料理洗濯掃除に育児……家のことは何でもできる家庭的な女性が良いでしょう。ゆえに、やるべきは障害物レース家事版でしょう」
「なによ、障害物レース家事版って?」
聞き慣れない言葉に、眉を顰めるセレン。
「名前の通りです。途中に設置された障害物ならぬ家事をこなしていき、最初にゴールした人の優勝、晴れてルーク様のお嫁になることができるのです(ふふふ、これならばメイドであるわたくしに勝てる者など皆無……ルーク様はわたくしのもの!)」
「そんなレース、絶対にダメだから!」
「まともに料理すらできないあなたでは、ゴールすることも不可能でしょうね」
言い争う二人は、そこからなぜか色んなレース案を出し合うことになった。
セレンがダンジョン攻略タイムアタック競争を提案すれば、ミリアは制限時間内に何品料理を作れるか対決を提案し、セレンがオーク早捕まえ競争を提案すれば、ミリアは部屋の早掃除競争を提案した。
うーん、この議論、一生終わらないだろうなぁ。
そもそもそんなやり方で結婚相手を決めたくなんかないんだけど……?
「い、今は村長業が忙しくて、そこまで考えている余裕もないし、きっとまだもう少し先のことだろうなぁっ! そうだ! ブルックリさんから、相談したいことがあるって言われてたんだった! 重大な話かもしれないし、すぐにブルックリさんのところに行ってこよう!」
議論がヒートアップしていく二人を余所に、僕は逃げるようにその場から立ち去ったのだった。
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