第405話 認めるしかあるまい
フィリアさんの花婿を決めるための魔境の森耐久レースは、セリウスくんの優勝で幕を閉じた。
一人目がゴールした時点で、すでにそれ以上、レースを継続する必要はない。
だけど、それをまだレース中の人たちに伝えて回収しようとしたところ、たとえ敗北が決定していたとしても、ゴールまで走ってみせると全員から突っ撥ねられてしまった。
結果、ギブアップした人たちを除くと、十三人が無事にゴール。
最後の一人は、スタートからゆうに三十時間後が経過してのゴールだった。
ちなみにそれは最短距離を進んできたはずのガンザスである。
「よく頑張った!」
「しかも五十代だろう?」
「俺も頑張らねぇとな!」
パチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチパチ。
ゴールの瞬間には大勢の村人たちが集まり、大きな拍手が鳴り響いた。
そしてガンザスさんを、ゴール地点で待ち構えていたのは、
「うふぅん、アタシの感動しちゃったわぁん。最後まで諦めないその心。それでこそアタシの弟子よぉん♡」
「ゴリちゃん師匠……」
「フィリアちゃんの代わりに、アタシがお婿に迎えてあげたいくらいねぇ?」
「そそそ、それはちょっと……っ!?」
「冗談よ、冗談♡」
「ほっ……」
大きく安堵の息を吐くガンザスさんだった。
魔境の森耐久レースから数日後。
その日、村の大聖堂に大勢の村人たちが詰めかけていた。
パパパパーン、パパパパーン、パパパパン、パパパパン、パパパパン、パーパーンパパーンパーンパ、パンパンパンパンパ~♪
聖楽隊による晴れやかな音色が響き渡る中、二人の男女が入場してくる。
セリウスくんとフィリアさんだ。
そう。
今日は二人の結婚式なのである。
「うおおおおおおっ、フィリアああああああっ、よかったのおおおおおおっ!」
「あうあう?」
お父さんのレオニヌスさんが大号泣している。
そんな父親の姿を、生まれたばかりのフィリアさんの弟はまったく泣くことなく不思議そうに見つめていた。
「セリウス……立派になったの」
一方、式にはセレンとセリウスくんのお父さん、セデス伯爵も来ている。
伯爵家の跡継ぎであるはずのセリウスくんだ。
それが異種族のエルフを嫁にするとなって、初めて話を聞いたときは大反対したらしい。
だけど、フィリアさんに会った瞬間、
『(めちゃくちゃ美人ではないかああああああああああっ! なんと羨ましいっっっっっ!!)』
『父上?』
『う、うむ、セリウスよ、お前がそこまで言うのなら、儂としてはもう認めるしかあるまい。好きにするがよい(こんな美女が儂の義理の娘に……うむ、悪くない)』
『まだ何も言ってないですが……』
なぜかあっさり認めて、式にもノリノリで来てくれたのだった。
それにしても、セリウスくんはつい最近、十五歳になったばかり。
フィリアさんは百五歳ぐらいだという(エルフはあまり正確に年齢を数えないみたい)。
つまり年齢差なんと九十歳の夫婦の誕生である。
うーん、改めて考えるとすごい話だ……。
なお、エルフの百歳は人族に換算すると三十歳ほどらしいなので、十五歳くらいの差と考えることもできなくはない。
そんな歳の差カップルの二人が向かう祭壇の前には、ミリアの姿が。
いつものメイド服ではなく、今日はしっかりした祭服で、ステンドグラスから差し込む陽光も相まって、まるで聖女のように見える。
新しい門出を迎える二人に、ミリアは柔和に微笑みかけながら告げた。
「健ヤカナルトキモ、病メルトキモ、喜ビノトキモ、悲シミノトキモ、妻ヲ愛シ、敬イ、命アル限リ真心ヲ尽クスコトヲ誓イマスカ?」
……何でカタコトなんだろう?
「ち、誓いますっ」
「うむ、誓おう」
「ソレデハ、誓イノキスヲ」
そうして互いに向かい合う二人。
だけど本当なら新郎が新婦の被ったベールを上げ、誓いのキスをするはずなのに、セリウスくんが一向に動かない。
「きききききっ……きすっ……ききききっ……」
そんな謎の音を発しながら、顔がどんどん紅潮していく。
うーん、これはダメかも……。
と思っていると、フィリアさんが自らベールを剥ぎ取り、一瞬の隙をついて自分の唇をセリウスくんの唇にくっ付けてしまった。
「~~~~~~~~~~~~っ!?」
「人族の世界では、誓いのキスとやらをしなければ、婚姻が成立しないのだろう? それは困るからな」
ブシュウウウウウウウウウウウウウウウッ!!
あ~あ、セリウスくん、また鼻血を出して倒れちゃった……。
フィリアさん、子供を欲しがってたけど、キスだけでこれじゃあ、子供ができるのはまだまだ先の話になりそうだ。
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