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万能「村づくり」チートでお手軽スローライフ ~村ですが何か?~  作者: 九頭七尾
第五章

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第403話 花火が上がった

 正午にスタートしたレース。

 気がつけば日が暮れて、夜になってしまった。


 レースの状況をリアルタイムで確認できるのは僕だけで、他のみんなはただひたすら待つのみということもあって、花嫁になるフィリアさんを除いてそれぞれ自宅に戻っている。


 そのフィリアさんはというと、ずっと静かに瞑目していた。

 この伝統儀式の間、花嫁候補は休まず祈りを捧げ続けるというのが習わしらしい。


「すぅ……」


 ……寝ちゃってるけど。


 ひゅ~~~~~~~~ばんっ!


「あ、花火が上がった」


 森のどこからか打ち上げられた花火。

 誰かがギブアップを宣言したのだろう。


 影武者がマンツーマンで様子を確認しているので、すでに救出に行ってるはずだ。


 すぐに影武者が脱落者を連れて瞬間移動してきた。


「くっ……無念……」


 戻ってきたのは冒険者の青年で、悔しそうに顔を歪めている。

 どうやら魔物に取り囲まれて、泣く泣くギブアップしたらしい。


 ちなみにこれが初めての脱落者だ。

 その後も次々とギブアップが出て、影武者に連れ戻されてくる。


 森の深いところに到達したというのもあると思うけど、夜になって急激に脱落者が出始めたというのは、やはり日中よりも危険度が増すためだろう。


 結局この夜の間に、五人もの脱落者が出た。


 そしてレースが始まって、十八時間が経過。

 今は朝の六時で、東の空に陽が昇り始めている。


「どう、レースの様子は?」


 仮眠を取っていたセレンが、眠そうな目をこすりながら訊いてくる。


 ちなみに僕は一睡もせずに様子を見守っていた。

 影武者に任せることもできたんだけど、どうしても経過が気になって眠れなかったのだ。


「うん、もう一時間もすれば森を出てくると思うよ」

「え、そんなに進んでるのっ?」

「思ってたより早いよね。まったく休みなく走り続けてるから」


 フィリアさんが「丸一日はかかる」と予想していたけど、大きく外れていた。

 村のみんなもゴールの瞬間を見たがっていたけど、このままいくと見逃してしまう人もたくさん出そう。


「誰が先頭なの?」

「今のところはディルさん。でも……セリウスくんが猛スピードで追い上げてる」


 森の深部を抜けたのはディルさんの方が圧倒的に速かった。

 セリウスくんは次から次へと襲いかかってくる魔物に大いに苦戦し、かなり遅れてしまったのだ。


 だけどようやく最も危険な一帯を突破した後からは、セリウスくんが徐々に距離を詰めてきていた。

 このままいくと、ディルさんに追いつけるかもしれない。


「ただ、本当にギリギリだよ。魔物と何度もやり合って、負傷も疲弊もしてる」

「大丈夫よ、セリウスなら。ちょっと頼りないところもあるけど、やるときはやる子よ。それに、私の自慢の弟だもの」


 不安がる僕とは対照的に、セレンはそう断言する。


 ゴールは村の北にある門だ。

 そこを最初に潜り抜けた男性が、晴れてフィリアさんを花嫁に迎えることができる。


「えっ、もうゴールだって?」

「まだ朝だぞ」

「早く見に行かないと!」


 予定よりも早くゴールしそうだと知った村人たちが、慌ててゴール地点に集まってくる。

 村の外では村人たちがずらりと並んで二つの列を作り、門まで続く道を形成していった。


「見ろ! 誰か森から出てきたぞ!」

「本当だ! 誰だ!?」

「あれはっ……確か冒険者のっ!」


 先頭で魔境の森を突破し、荒野に飛び出してきたのはディルさんだった。

 さすがに疲労困憊といった様子で、少し足を引き摺りながらこちらに走ってくる。


「ディルのやつが先頭だ!」

「普段は影が薄いのに、めちゃくちゃ目立ってるじゃない!」

「ディルが勝てば、予選で敗北した拙僧の無念も晴れるというもの……否、羨まし過ぎるうううううううっ!! 拙僧と変わってくれえええええええっ!」


 アレクさんたちパーティメンバーも見守る中、ディルさんはもう村まであと半分というところまできている。

 森からはまだディルさん以外が出てくる気配がない。


 このままディルさんの優勝かと思われた、そのときだった。


「来た! セリウスくんだ! って、空から!?」


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