第402話 気休め程度かもしれないけど
危惧していたことが起こった。
魔境の森を最短距離で突っ切ろうとしたセリウスくん。
途中までは順調に他を引き離し、先頭をひた走っていたのだけれど、魔境の凶悪な魔物と遭遇してしまったのだ。
しかもただの魔物じゃない。
全身が巨大な岩になった、ロックドラゴンと呼ばれる魔物だ。
ちなみに僕は今、ヴィレッジビューというマップの機能を使って、リアルタイムでセリウスくんの様子を見ている。
ロックドラゴンが身体の一部を爆発させることで岩の破片を浴びせ、頭上を飛び越えようとしていたセリウスくんを撃ち落としたところだ。
「ぐ……こ、こいつはっ……」
どうにか致命傷は避けたようで、顔を歪めながらも立ち上がるセリウスくん。
すぐに二本の剣を抜いて応戦しようとする。
だが相手は岩のように硬いロックドラゴン。
当然ながら簡単に倒せるような魔物ではない。
そしてもちろんこのレース、わざわざ魔物を討伐する必要なんてなかった。
セリウスくんはすぐに踵を返すと、ロックドラゴンに背を向けて逃げ出した。
だけどロックドラゴンは、獲物は逃さないとばかりに、すぐさま追いかけてきた。
木々を薙ぎ倒し、地響きを流しながら、意外にもかなりの速度で追撃する。
何より厄介なのが、先ほどセリウスくんを墜落させた岩の雨だった。
「くっ……」
それをどうにか躱しつつ、ロックドラゴンを徐々に引き離していくセリウスくん。
そんな彼が突っ込んでいったのは、トロルの集落だった。
「「「オアアアアアアアアッ!!」」」
「トロル!?」
ロックドラゴンに集中していたせいで、自分がトロルの群れの中に飛び込んだことにようやく気づくセリウスくん。
なんとかその巨体の間を縫って集落を駆け抜けていく。
「グルアアアアアアアアッ!!」
遅れてロックドラゴンが集落に突入してくる。
トロルの原始的な家屋を次々とぶち壊しながらセリウスくんを追う。
するとトロルたちが激怒し、ロックドラゴンに襲いかかった。
巨大な棍棒を、ロックドラゴンの身体に何度も叩きつける。
これにはロックドラゴンも激昂して、トロルを蹴散らし始めた。
「……助かった」
魔物同士がやり合う隙に、集落から逃走して安堵の息を吐くセリウスくん。
「でも、ここが魔境の深部っ……思っていた以上の危険地帯だ……っ!」
魔境の森の脅威を肌で理解し、警戒を強めるセリウスくんは、そこで支給された魔物避けのアイテムを使用。
これは魔物が嫌う匂いをつけたお香なのだけれど、その場に留まるならともかく、森の中を走っている状態でどれだけ効果があるのかは疑問だ。
「気休め程度かもしれないけど、ないよりはマシだろう」
実際、その後もセリウスくんは幾度となく魔物に遭遇してしまう。
どうにか戦闘を避けつつ、休むことなくひたすら南下していく。
一方のディルさんはというと、やはり『索敵』のギフトが強力で、凶悪な魔物を上手く躱しながら森を進んでいた。
隠密行動も得意なので、何度も魔物に見つかってしまうセリウスくんとは対照的に、今のところまったく魔物に襲われていない。
そうこうしている間に、ついにディルさんがセリウスくんを逆転してしまった。
ちょうど魔境の森の中心に到達した地点だ。
「荒野部分を除くと、もうあと半分……セリウスくん、頑張って……っ!」
セレンに念を押されたので、僕はただ行方を見守り、マップ越しに応援するしかない。
ちなみにガンザスさんはというと、セリウスくん同様、魔物に襲われまくっていた。
「ぬうっ! またかっ! だが負けぬぞっ! ぬおおおおおおっ!」
迫りくる魔物を千切っては投げ千切っては投げしているけど、ほとんど同じ場所から動いていない。
そもそもスピードが遅いせいで、セリウスくんのように放置して先に進むことができないのだ。
「ガンザスさんには悪いけど、さすがにここから逆転は難しいと思う。となると、やっぱりセリウスくんとディルさんの二人に絞られた感じだね」
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