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万能「村づくり」チートでお手軽スローライフ ~村ですが何か?~  作者: 九頭七尾
第五章

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第322話 見慣れているので

「お主らその途中、年頃のおなごを見かけなかったかっ!?」

「おなご、であるか?」


 興奮したように聞いてくる隻眼のサムライに、ガイさんが聞き返す。


「うむ。実はわしの愚娘が、単身であの山脈越えをしてみせると宣言し、屋敷を出ていってしまったのじゃ……そんな馬鹿なことはやめろと言っても、まったく聞く耳を持たずにの……」


 え、それって……。


「もしかしてその人、アカネさんって言いませんか?」

「っ! 知っておるのか!?」


 どうやらこの人、アカネさんのお父さんらしい。


「ということは、娘は無事なのじゃな?」

「そうですね、少なくとも、山脈の途中で出会ったときには……」


 ドラゴンに助けられ、村に連れてこられたということは、アカネさんの名誉のためにも黙っておこう。

 また切腹しかねないし。


「ちょうど山脈の真ん中あたりで出会ったので、そろそろ西側に着いている頃だと思いますよ」

「なんと……まさか、事あるごとに腹を切りたがるあの愚娘が、本当に単身踏破を……」


 ……アカネさんの切腹癖には、父親も困っているらしかった。


「む、そういえば、申し遅れたの。わしの名はマサミネ。伊達マサミネじゃ。今はセンデ藩の藩主を務めておる」


 藩主というのは、西側で言う領主のようなものだろう。

 アカネさんって、結構いいところのお嬢さんだったんだね。


「せっかく来てくれたのじゃ。わしに西側の話を聞かせてくれぬかの」


 マサミネさんの提案を受けて、屋敷の奥に案内される。

 その途中のことだった。


「殿っ! 殿っ! 捜しましたぞ!」


 血相を変えてこちらに走ってくる家臣と思われる初老の男性。

 マサミネさんが眉根を寄せながら問う。


「なんじゃ? わしは今、見ての通り客人のお相手をしておるところじゃぞ?」

「お客人……」


 男性はちらりと僕たちを見て、見かけない姿だからか、一瞬驚いたような顔をしたものの、すぐに声を荒らげ、諫めるように言った。


「そんなことよりも、殿! 将軍との謁見のお時間ですぞ! 今すぐ出発せねば、遅刻してしまいますぞ!」

「~~~~っ!?」


 その言葉に、ハッとするマサミネさん。

 そして見る見るうちに顔色が真っ青になっていき、


「そ、そうであった……っ! 今日はエドウ城に参上し、将軍に謁見する日であった……っ! そんな大切な仕事を忘れておるとは……」


 何を思ったか、マサミネさんは上着を脱ぎ棄てると、腰に差していた短い方の刀を抜く。

 ちょっ、もしかしてこの流れは……っ!?



「伊達家当主として、一生の不覚っ! 末代までの恥っ! かくなる上は、腹を切ってお詫びするしかあるまい!」



 やっぱり切腹だああああああああっ!?


「と、殿ぉぉぉぉぉっ!?」

「おやめくだされぇぇぇっ!」

「お前たち、殿がまたご乱心だっ! お止めしろぉぉぉっ!」


 家臣と思われる人たちが一斉に飛んできて、腹を切ろうとするマサミネさんを必死に止めた。


 ……どうやらアカネさんの切腹癖は遺伝だったみたい。







「……見苦しいところを見せてしまったのじゃ」

「い、いえ、大丈夫です」


 あなたの娘さんのせいで見慣れているので。


 どうにか落ち着いた様子のマサミネさん。

 決死の覚悟で切腹を制止させた家臣たちは、息を荒らげながら周囲に転がっているけれど。


「そして悪いが、今すぐエドウ城に参上せねばならぬのじゃ。また詳しい話は、戻ってきてから聞かせてもらう形でもよいかの? 無論、その間この屋敷で自由に寛いでもらって構わぬ」


 そう謝ってから、ふと何かを思いついたように、マサミネさんは「待てよ」と呟く。


「珍しい西側からの旅人じゃ。きっと貴重な話も聞けるはず。となれば、真っ先に将軍に紹介するのが臣下としての道理……そんな当然のことに、ようやく思い至るとは……っ! やはりわしは伊達家の当主に相応しくないっ! 今ここで絶命するが、一族がため――」

「「「おやめくだされ、殿ぉぉぉぉぉぉっ!」」」


 ……遅刻しそうなんだよね?

 もうちょっと急ごうよ。


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生活無双
12月17日発売!!!
― 新着の感想 ―
[一言] この手の人は一人でいるときはなぜか切腹とかの極端な発想は出ないんだよねw
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