第313話 産休に入ったらしいぜ
国内のみならず、周辺国との交流も盛んになり、最近ますますこの村を訪れる人たちが増えてきた。
各地に敷いた鉄道網もあって、行き来が簡単になったしね。
そしてその中には、世界各地を旅しているような冒険者パーティも少なくない。
彼らの目当てはもちろん、我が村にあるダンジョンだ。
「ルークのお陰で、ダンジョンポイントが使い切れないくらい貯まってるんですケド!」
そのダンジョンの主である妖精のアリーが、鼻息を荒くして言う。
「だから最近は、まず誰も気づかないだろうっていう場所に、ほとんど趣味みたいな隠しエリアをいっぱい作ってるんですケド!」
彼女が自由気ままに作った隠しエリアを幾つか見せてもらったのだけれど、床一面がずっと針山になっていて「これどうやって進むんだ?」というようなエリアや、直径一メートルサイズの小さな穴が延々と続いているようなエリアなど、どれもこれも挑戦者の顰蹙を買うようなものばかりだった。
ダンジョンマスターなのに、アリーにはダンジョンをデザインするセンスが皆無なのだ。
なのでいつも僕が一緒に考えてあげている。
「まぁ、人がほとんど入らないところならいいと思うよ」
ともあれ、今では五十階層を超えるような巨大ダンジョンとなっていた。
僕たちが見つけたときはたったの二階層しかなかったのにね。
「冒険者たちが言うには、こんな広大なダンジョン、今まで見たことないってさ」
「ふふん! ダンジョンマスターとして、その言葉はすごく嬉しいんですケド!」
ちなみに現状の最高到達階層は、アレクさんたちのパーティが記録した四十二階層――ではなく。
ゴリちゃんを臨時の助っ人として組み入れた、セレン率いる狩猟隊の面々が記録した五十階層である。
普段はそれほどダンジョンに挑戦しているわけではないセレンたちに抜かれて、アレクさんたち随分と悔しがってたっけ。
このダンジョンに挑んでいるのは、何も冒険者たちだけじゃない。
セレンたち狩猟隊や村の衛兵たちの訓練場所としても利用されている。
最近では、周辺領地の領兵たちが訓練に来たりもしているし、ラウルが指導している国軍が来ることもあった。
さらには、ごく普通の村人たちも。
「おい、見ろよ。あのご婦人たち、恐らく噂の……」
「まさか、冒険者でもないのに、このダンジョンの三十階層にまで到達したっていう?」
「ああ、見た感じ、井戸端会議をしにきた婦人たちにしか見えないがな」
「しかし四人しかいないな? 五人組だって聞いていたが」
「一人は産休に入ったらしいぜ」
「産休」
ダンジョン入り口前の広場で、冒険者たちの注目を浴びているパーティがいた。
この村の婦人たちばかりで結成された、五人組のパーティ『婦人会』だ(ただし一人は産休中)。
「せっかく戦えるギフトを貰ったんだから、活用しないと損よね」
そう主張するのは、『大剣技』のギフトを持ち、パーティのリーダーを務めるバーバラさんだ。
二男一女の母だけれど、今は背中に巨大な剣を担いでいる。
「ほんとよね。幸いダンジョンはすぐ近くだし、パート感覚でいけちゃうわ」
ダンジョン攻略をパート感覚と評したのは、『黄魔法』のギフトを持つポランさん。
一男三女の母である彼女は、石を弾丸のごとく飛ばし、魔物の額をぶち抜くのを得意としているらしい。
「今日の夕ご飯、何にしようかしらねぇ」
夕食のことに頭を悩ませているのは『暗殺』のギフトを有し、二人の息子さんの母であるアメリアさんだ。
気配を消して魔物に近づき、その急所を突いて簡単に仕留めてしまうという。
「ねぇねぇ、知ってる? メリアさんちの彼。まだ十歳なのに、もう彼女がいるんだって。その彼女っていうのがね、なんと――」
と、楽しそうに世間話を始めたのは、『保管庫』のギフトを授かったベーネさん。
三人の娘さんがいる彼女は、物資を異空間に保管しておけるらしく、エルフ印のポーションなどを大量にダンジョン内に持ち込むことができるそうだ。
ちなみに最後の一人は、『盾技』のギフトを持つハンナさん。
現在、三人目を妊娠中の彼女は、そのギフト通りパーティの盾役らしい。
……つまり、全員が強力なギフト持ちなのである。
「行くわよ、みんな。今は盾役がいないから、ほどほどに頑張るわよ」
「「「お~~っ!」」」
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