第289話 ダイエットには良さそうですね
ルブル砂漠が広がるのは、シュネガー侯爵領の南東の一帯だ。
僕たちは侯爵領を縦断するルートで砂漠へと向かった。
ちなみにシュネガー侯爵家は、一度アルベイルに敗れて領地を失ったけれど、現在は返還されて再びこの地を治めている。
「すごい! ほんとにず~~っと砂が広がってるわ!」
シュネガー侯爵領を過ぎてしばらく荒れた大地の上を進んでいると、やがて前方に砂漠が見えてきた。
高度を下げ、地面に近づいてみる。
「せっかくだし降りてみましょ!」
「ちょっ、まだ高いよ!?」
セレンが公園から飛び降り、砂の上に着地した。
慌てて公園を着陸させ、僕たちも砂漠に降り立ってみる。
草木はほとんど生えていない。
ただひたすら砂地だけが続いていて、遠くの方は陽炎が起こっている。
あまり雨が降らない地域で、雲も少ないせいか、照り付ける日差しが容赦ない。
しかもそれが砂で反射するため、上下から照り付けてくるような形だ。
乾燥した砂地は水分が乏しくて熱しやすく、まだ午前中だというのに、軽く砂に触れてみると火傷しそうなくらい熱くなっていた。
ものの数分いただけで、汗が噴き出してくる。
こんなところを歩いていたら、あっという間に干上がっちゃいそう……。
「ダイエットには良さそうですね」
「あんたしばらくその辺を歩き回ったらどう?」
「あなたはやめた方が賢明ですね。ただでさえ小さなそれが完全に萎んでしまいますから」
「こ、これでも前よりちょっと大きくなったのよ!」
ミリアとセレンが言い合い始めたけど、この暑さじゃ止める気力もない。
そのとき、砂の中から何かが飛び出してきた。
直径二メートル近くはあるだろう、巨大な芋虫だ。
全長はまだ大部分が砂の中にあるため分からないけれど、結構な大きさであることは間違いない。
「ワームだ! 気を付けろ! こいつは砂の中に隠れながら攻撃してくる!」
すかさず矢を放ちながら、フィリアさんが叫ぶ。
身体に矢が突き刺さると、ワームは慌てて砂の中へ。
「逃げたのかしら?」
「いや、ワームは一度狙った獲物を逃さない。意外と知能も高く、いったん砂の中に避難し、こちらが油断するタイミングを見計らっているのだろう」
僕やミリアなど、戦えないメンバーはすぐに公園の上に避難した。
ここならワームが攻撃してくることはないからね。
「セリウス殿! 足元だ!」
「っ!?」
セリウスくんの足元が盛り上がったかと思うと、間欠泉のごとく先ほどのワームが飛び上がってきた。
ギザギザの牙が並ぶ円形の口を大きく開け、そのままセリウスくんを呑み込もうとする。
「ふっ!」
けれどセリウスくんは風を使い、空に向かって大きく跳躍。
ワームの牙を逃れた。
すぐさまUターンし、砂の中に戻ろうとしたワームだったけれど、その前にみんなの一斉攻撃が火を噴いた。
「~~~~~~~~~~~ッ!?」
容赦ない集中砲火を浴びて、ボロボロになったワーム。
それでも何とか砂の中に退避しようとしたところを、がっしりとゴリちゃんに掴まれる。
「あらん、逃がさないわよぉ♡ そいやあああああっ!」
そのまま威勢のいい掛け声とともに、力任せにワームを引っ張り上げ、砂の中から引き摺り出してしまうゴリちゃん。
ワームの全長は六メートルから七メートルといったところだろうか。
必死に暴れているけれど、怪力のゴリちゃんから逃れることはできない。
もはや完全な無防備となったワームに、みんながトドメを刺そうとしたときだった。
「ま、待ってくれ! できるだけ傷つけないように殺してほしい!」
「? どうしたの、コークさん?」
急に大声で割り込んできたコークさんに、みんなが動きを止めて首を傾げる。
「その魔物っ……」
コークさんは目を輝かせ、叫んだのだった。
「素晴らしい食材になりそうなんだ……っ!!」
えええ……。
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