第247話 相変わらず便利すぎだろ
荒野の村にも春が近づいてきた。
まだまだ寒い日は続いてはいるけれど、段々と日は長くなってきていて、冬の間に降り積もった雪もゆっくりと溶け始めている。
王国の南の方はすでに暖かくなっていると、村に来た商人が言っていた。
王都でもつい最近、春の訪れを祝うお祭りが行われたそうだ。
「今年はのんびりした一年になればいいなぁ」
という僕の呟きが、もしかしたらフラグだったのかもしれない。
その直後、王都にいる影武者から急報が届いたのだ。
『え? 隣国が攻めてきた?』
『うん。それで王様が本体に相談したいことがあるんだって』
『相談って……』
面倒な予感しかしない。
だけど突っ撥ねるわけにもいかなかった。
……これだからあまり為政者とは関わりたくなかったんだよね。
仕方なく僕は王宮へと飛んだ。
「おお、ルーク! 来てくれたか」
「はい。一応、影武者から話は聞きましたが……」
「うむ。実は大変なことになっておってな」
王様は焦燥した様子で説明してくれる。
「この国の南側にバルステという国があるのだが、そこが我が国へと攻めてきたようなのだ」
バルステは元々小さな国だったという。
だがこの国が諸侯同士の戦乱に明け暮れている間に急速に勢力を拡大し、今ではこの国に勝るとも劣らないほどの国力を有するまでに成長しているらしい。
「恐らく以前から内戦に喘ぐ我が国を狙っていたのだろう。その内戦が終息に向かっていると知って、我が国が一つに纏まる前に攻めてきたというわけだ」
「ええと、それで現状は?」
「……非常に悪いと言わざるを得ない。南の守りはタリスター公爵家が担っているが、とてもではないがタリスターだけでは圧倒的に兵力が足りぬ。なにせ敵軍は、判明しているだけでも軽く五万を超えているというのだ」
北のカイオンと並ぶ、もう一つの公爵家が南のタリスターだ。
それでも用意できるのはせいぜい一万ほどの兵力だという。
「はっ、癪だが、まさに親父が言っていた通りの事態になっちまったってわけだ」
と、話に割り込んできたのはラウルだった。
「もっとも、あの親父がこの国を支配していたとして、それでこのタイミングに間に合ったとは思えねぇがな」
ラウルの言葉に王様は少し苦笑しつつ、続けた。
「……無論、こちらも諸侯に協力を呼びかけ、国軍の派遣準備も進めている。貴殿が作ってくれた鉄道のお陰もあって、遥かに早く援軍を送ることができそうではあるが……しかしそれでも、間に合うかどうかは危ういところだ。なにせ我が国はようやく冬が開けたばかりだからな。春が早い南国のバルステは嫌なタイミングを突いてきたものだ」
王家が管理している国軍であれば、すぐにでも派遣できるという。
ただ、まだまだ独立性の強い諸侯から援軍を呼び集めるのは、簡単なことではないらしい。
「そこで、だ。これまで驚くべき力で幾度となく数の不利を覆し、戦いで勝利してきたお主ならば、何か良い案があるのではないかと思って、こうして呼び出させてもらったのだ」
そ、そんなに期待されても……。
というわけで、僕は王国最南のタリスター公爵領へと飛んだ。
影武者がここまで鉄道を伸ばしていて、すでに村の領内なので、瞬間移動で来ることができるのだ。
「相変わらず便利すぎだろ……。こいつを使えば、軍を一瞬で移動させることもできちまうんじゃねぇか?」
一緒に付いてきたラウルが呆れた様子で言う。
「僕の身体に接してないと一緒に飛べないから、結構面倒だけどね」
一度のせいぜい十人くらいだろう。
万単位の軍となると、どれだけ瞬間移動しなければならないことか。
「それより、もっと簡単なやり方があると思うんだ」
「移動のか?」
「ううん、そもそもの敵軍を撃退する方法」
「何だと?」
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