第242話 一気に攻め落とせ
「来やがった……っ! 全員、奴らを迎え撃て……っ! あたしら女の強さを見せてやれ……っ!」
リリさんが声を張り上げて群れに命じる。
けれど内心ではこの状況に焦っているらしく、額からは汗が噴き出していた。
「くそっ……男どもに加えて、犬野郎どもまで……護り切れるのか……?」
「大丈夫だよ」
「っ!? 何か良い策でもあんのか!?」
「策ってほどでもないけど……」
「うわっ、先陣がもう来ちゃうぞ!? ああっ! 味方を踏み台にして、石垣を……」
ララさんが悲鳴を上げる。
見ると、どうやら石垣の前で立ち止まった仲間の背中を蹴って、一気に飛び越えてこようとしているようだ。
「うわ、凄いね。さすが獣人の身体能力。……とりあえず、もうちょっと石垣を高くしておいた方がよさそうだね」
「は? どういう……」
僕は施設カスタマイズを使って、石垣を縦方向に二メートルほど伸ばしてやった。
その結果、石垣を飛び越えようとしていた獣人たちが、高さが足りなくってしまい、
「い、石垣がっ!?」
「高くなっ……」
「うあああああああっ!?」
ドオオオオオオンッ!!
……うわ、めちゃくちゃ痛そう。
◇ ◇ ◇
何人かが先陣を切って石垣を飛び越えようとしたそのとき、突如として石垣が高くなった。
ドオオオオオオンッ!!
「「「あばっ!?」」」
その結果、石垣に正面から思い切り激突してしまう。
「な、何だ!?」
「石垣が一瞬で伸びた!?」
「ば、馬鹿な!? そんなはずはない!」
俄かには信じがたい事態に驚き、第二陣は思わず足を止めてしまった。
そんな彼らの前に先陣たちが落下してくる。完全に気を失っていた。
「いでっ!?」
「今度は何だ……っ!?」
「い、石だ! 石が降ってきた!」
狼狽える彼らへ降り注いできたのは大量の石である。
見ると、石垣の上に登った女たちが、次々と石を投げてきているのだ。
「あがっ!?」
「くそっ! こんなのアリかよ!?」
「ひぃぃぃっ!」
獣人が投石を使うことなどあまりないため、男たちは予想外の攻撃に戸惑う。
しかもただの投石と侮ることなどできない。
高いところから投げ下ろされると、結構な威力なのである。
頭部に思い切り喰らって、そのまま気を失う者が続出した。
「怯むな! 一気に攻め落とせっ!」
ガガが叱咤の声を張り上げる。
すると石の雨を浴びながらも、何人かが石垣の上まで到達し、そこで女たちと戦い始めた。
お陰で少し投石の勢いが落ちついてくる。
「今だ! この瞬間を逃すなっ!」
と、ガガが号令を出したそのとき。
「うわあああっ!?」
「がぁっ!」
「う、嘘だろ、いつの間に――」
聞こえてきたその悲鳴は、不思議なことに彼の背後からだった。
慌てて振り返ったガガは絶句する。
「なっ……なぜ後ろにっ!?」
一体どこから湧いて出たのか、女たちが後方から彼らに襲いかかっていたのである。
その中にはリリの姿もあった。
「オラオラオラっ! ぶっ倒せぇぇぇっ!」
怒声を張り上げながら、獅子奮迅の戦いを見せている。
こうして男たちと犬族の混成部隊は、両側から襲撃されるという事態に陥ってしまった。
石垣を利用して戦っていた女たちも打って出てきており、完璧な挟撃によってもはや彼らは袋のネズミだ。
「クソっ、どういうことだ!? こんなはずは……うおっ!?」
次の瞬間、ガガの身体が宙を浮遊する。
いつの間にか、彼の足元の地面が消失していたのである。
「ぎゃっ!? ぐっ……な、何が起こっている……」
叩きつけられてしまったのは謎の地下道の床だ。
理解不能な出来事の連続で困惑する彼に、背後から声が投げかけられた。
「やあ、こんにちは」
「っ!? き、貴様はっ……」
振り返ると、そこにいたのは人族の少女だった。
彼らがターゲットにしていた張本人が、自ら姿を現したのである。
しかもたった一人だ。
彼女を人質にすれば、この劣勢を覆すことができるかもしれない。
一瞬でそう判断したガガは、その少女へ躍りかかっていた。
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