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万能「村づくり」チートでお手軽スローライフ ~村ですが何か?~  作者: 九頭七尾
第二章

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第120話 次期当主だったはずだったのに

 同じアルベイル卿の子供と言っても、側室の息子だったラウルの扱いは、正室の子であるルークとはまるで違っていた。


 ルークの御祝い事は、いつだって盛大なものだった。

 豪華な料理に、高価なプレゼントの数々。


 一方、ラウルのそれは常にささやかなもので、普段の食事にちょっとしたケーキが付いている程度。

 プレゼントだってルークの十分の一もない。


「ああ、可哀想なラウル。本当ならあなたが次期当主だったはずだったのに……」


 ラウルは母親からいつもそう聞かされていた。


 アルベイル卿の正妻がなかなか子宝に恵まれず、それゆえメイドだった彼女に白羽の矢が立ったのが、ラウルが生まれる一年ほど前のことだ。

 下級貴族の出で、当然ギフトなど持っていなかったが、それでも妊娠が発覚すると、ついに当主に世継ぎが誕生したと城中が歓喜に包まれた。


 だがそれも短い間だった。

 僅か数日後に正妻が懐妊したことが分かり、数か月後にはルークが生まれてきたのである。


 その結果、ラウルが次期当主になるという芽はほぼ潰えてしまった。

 さらには後から誕生したはずのルークが兄となり、ラウルは弟ということにされてしまったのだ。


「ごめんね、ラウル……。もしお母さんの家柄がよかったら……もしギフトがあったら……。お前が次期当主の座を奪われることもなかったかもしれないのに……」

「……」


 申し訳なさそうに謝ってくる母親に、ラウルはいつも何も言えなくなってしまうのだった。


 そして募るのはルークへの怒りだ。

 もしルークが生まれてこなければ、こんな風に母が嘆き悲しむこともなかったかもしれない。


 ……実際には八つ当たりでしかないのだが、幼いラウルは怒りの矛先を偽りの兄へと向けていた。


 そんな状況が一変したのが、十五のとき。

 祝福の儀式だった。


「ルーク=アルベイル様のギフトは……む、『村づくり』です……」


 ルークが『剣聖技』を受け継ぐことができなかったのだ。

 しかも、どう考えても外れとしか思えない『村づくり』というギフト。


「ラウル=アルベイル様のギフトは……な、なんと! 『剣聖技』です!」


 それどころか、逆に可能性が低いと思われていたラウルが、『剣聖技』を授かってしまったのである。


 これまでルークばかりを贔屓していた父が走り寄ってきて、今まで見せたことのない笑みを浮かべて喜んでいる。

 母親は嬉しさのあまり泣き崩れていた。


 その日から、周囲のラウルに対する態度がガラリと変わった。

 日陰に追いやられていた母親も、次期当主の母として城内での立場が一変した。


 やがて忌まわしいルークを追い出すことに成功したラウルは、さらに『剣聖技』ギフトの力を遺憾なく発揮して、初陣でも大いに活躍した。

 その功績を評価されてか、アルベイル領の管理を一任されることとなり、もはやラウルがアルベイル家の次期当主になることを、疑う者など一人もいなくなっていた。


「王都のそれに勝る二重の城壁に、一万に迫る人口……? さらにはダンジョンだと……? で、出鱈目だ! 貴様、よくもこんな出鱈目を俺に見せやがったなっ?」


 そんな中、彼の耳に入ってきたのが、荒野に追放したはずのルークが、この短期間に信じがたい規模の街を築き上げたという話だ。

 もちろん最初は信じていなかったが、次第にそれが本当らしいという情報が集まってくる。


「ルーク……っ! てめぇは何でまだくたばってやがらねぇんだよ……っ! ()()この俺の邪魔をしやがるつもりか……っ!?」


 生まれた直後に奪われた次期当主の座。

 せっかく取り戻したというのに、また奪われてしまうのではないか?


 そんな恐怖が、ラウルを決心させた。

 そして自ら五千の兵を率いて、ルークを討つため領都を発ったのだ。


 だが彼を待ち受けていたのは悪夢の連続だった。


 城壁で築かれた巨大迷路。

 次々と消えていく兵士たち。

 突如として現れ、兵たちを襲った水堀に、ツリードラゴンの襲撃。


 どうにかそれを突破したと思えば、精鋭兵が移民ばかりの相手に圧倒され、自分もたった一人の少年に吹き飛ばされた。

 奥の手を解放し、せめてルークだけでも討とうと躍りかかったが、それも突如として出現した城壁によって阻まれてしまう。


 さらにはラウルのすぐ目の前で、その城壁が巨大なゴーレムへと変形していく。


「(一瞬で城壁をっ……土魔法、なんかじゃねぇっ……まさか、あれもこれも、全部こいつのっ……『村づくり』の力だっていうのかよ……っ!?)」


 もし外れギフトだと思われていた『村づくり』に、こんな力があると父親が知ってしまったなら。

 しかもラウルが戦いを挑み、敗北を喫したことが知られてしまったら。


 またルークが次期当主の座へと返り咲くことになるかもしれない。


「い、嫌、だ……俺は……てめぇに、だけは……負けられ……ね……ぇ…………」


 ゴーレムの拳に殴り飛ばされてなお、戦意を失わないラウルだったが、それでも意識が朦朧として視界が暗くなっていき――









「負けられねぇんだよおおおおおおおおっ!?」


 ――叫びながら目を覚ました。


「っ……ゆ、夢……?」


 もしかして長い悪夢を見ていたのだろうか。

 しかし周囲を見回してみて、ラウルは自分がいる場所に気がつく。


「……牢屋?」


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生活無双
12月17日発売!!!
― 新着の感想 ―
[気になる点] 親が悪いのは勿論だけど同じ家に住んでいながらラウルの状況を一切感知していなかった主人公にも少し責任があるよね。かりにも兄なんだからなにか一声かけるたけでも変わったと思うんだけどな。これ…
[気になる点] >そんな状況が一変したのが、十五のとき。 >祝福の儀式だった。  祝福の儀式は12歳の時という設定のはずだが?  第1話で「ギフトというのは、すべての人に与えられるわけではない。選ば…
2022/12/28 20:59 退会済み
管理
[一言] 人間卑人と言う者が居る生まれ育ちが卑しい者で、 こういう者を親に持つと、性格が歪み一生矯正不能だ 一度歪んだ洗脳に晒されると、一生歪みは残ると カルト宗教と戦ってた弁護士は言うよ、一度狂うと…
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