走・凱編 阪
続いては、阪だ。凱の四人目のパートナーである彼女は、走と凱、両方のグループを合わせても最年長のレオンでもある。
凱との間に艮という息子がいるが、おそらくは最後の子になるだろうなという予感もある。
凛のパートナーである侑の母親でもある彼女は、さすがに年齢的なこともあってか普段は落ち着いた様子を見せていることが多い。
ただ、前のボスのパートナーだった頃には群れの雌のリーダー的な立場で、しかも<女帝>よろしく君臨してる感じだった。
前のボスが亡くなる少し前にはその座を旋に譲って、半ば隠居状態だったらしいものの、以前の群れがオオカミ竜の襲撃を受けた時には、雌の先頭に立って戦って、何頭ものオオカミ竜を退けたりもしたんだよな。さすがに多勢に無勢だったことで結果としては敗北だったものの、仲間の多くが助かったのは彼女のおかげというのが大きい気がする。
だから、今でもキレると怖い。旋が調子に乗ってたりすると、
「ガアッッ!!」
と咆哮して睨み付けたりもする。
単純な<強さ>という意味では心身ともに充実している旋の方が上かもしれないものの、迫力は今も健在で、旋もたじろぐほどである。
それでも、普段はまあ<優しいおばあちゃん>的な雰囲気を醸し出してはいるんだ。
そして、群れの子供達全体の<お母さん>でもあるだろうな。たぶん、彼女からおっぱいをもらったことのない子はいないと思う。
走や凱に対しても厳しい一面を見せつつも、前のボスがいた頃から二人を甘えさせてくれたりもしてたしな。
彼女も雌の本能として走をボスとして認めてたようだが、やっぱり走が恵しか見ていないことで結果としては凱のパートナーになった。走は立派な雄なんだが、<群れのボス>という観点では、恵しか見ていないというのは欠陥でもあった。釈と沢ぼことは受け入れてるものの、その気持ちとしては『二人が諦めなかったから仕方なく』というのが見え隠れしているな。
だから、実際には凱の方がボスらしいかもしれない。
加えて、走がそんなだから、凛が侑に他の雌が近付くことを許さないという部分についてあまり煩く言う気になれないというのもあるんだよな。
凛と侑とその子供達だけを一つの群れとしてみたら機能不全を起こしていると見ることもできるものの、実質的には走と凱と凛のそれら三つが一つの群れを形成していると見ることもできる。
この形で今のところは上手くいってるんだから、それでいいんじゃないかな。
これも可能性の一つなんだろう。適さなければ次の代くらいにまた変わっていくだろうし、按も萌も朗も、時々、走や凱の群れに混じって遊んでいることもあるし、阪からおっぱいをもらったこともあるんだ。
そういう形でいろんな在り方を学んでるんだと思うよ。




