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走・凱編 里帰り

『私も、その一員になれますか……?』


少なくともビアンカにもその気持ちはあるということが示された言葉だと思った。


とは言え、人間というのは、


『一度口にしたことは決して違えない』


などという単純な生き物でもない。その時にはそう思っていても、それが本心からのものであっても、状況が変わればまた考えも変わってしまうこともあるのも人間というものだと思う。


それを『ブレてる』などと言って毛嫌いする人間もいるが、そういうことを言う奴ほど実はブレまくってたりするんだよな。自分がそうだから、見たくないところを見せられたくないというのもあるんだろうって気がしてる。


だから言うのは勝手だが、それが通ると思わない方がいいだろう。決して自分の思う通りにはいかないんだよ。俺も、そんな風に言う奴がいなくなるとは思っていない。


言いたい奴には言わせておけばいいんじゃないかな。


だが、俺は、もしビアンカが自分の言ったことを無かったことにしたとしても、それを責めるつもりもない。


『一員になれますかと言ったじゃないか!』


と詰め寄るつもりもない。


とは言え、そういう俺も、その時の精神状態によってはついきつい言い方で詰め寄ってしまったりすることもあるだろう。


それを思えばやっぱり『お互い様』ってもんなんじゃないか?。


なんてことを俺が考えてる間にも、ローバーはコーネリアス号へと到着した。


いきなり(そう)達にビアンカの姿を見せるとパニックになる可能性もあるので、コーネリアス号の陰で休んでるところにゆっくりと近付いて、


「どう? 変わりない?」


シモーヌが窓から顔を覗かせて挨拶している上で、ビアンカも自分の席から顔を覗かせて小さく手を振った。


すると見慣れない人間の姿に、群れが緊張するのが分かった。


顔を見せるだけでこれだから、やっぱりいきなり全身を晒すのはやめておいて正解だったな。


そんな(そう)達を横目に、コーネリアス号のカーゴスペースへ繋がるハッチを開けてもらい、ローバーを乗り入れた。


こうしてビアンカの<里帰り>は無事に果たせたわけだが、肝心のビアンカ自身に<ビアンカ・ラッセ>としての記憶がないので、本人としてもどう反応していいのかよく分からないようだったな。


それでも、不思議そうに見回しながら、


「なんか、懐かしい気がします。記憶は戻らないみたいですけど……」


と口にしたそうだ。


ビアンカには、あまり詳しく説明してない。かつてシモーヌの仲間で<ビアンカ・ラッセ>という名前だというくらいだ。本人が知りたがれば隠すつもりもなかったが、訊いてこなかったからな。


彼女としても自分の過去を知るのは不安があるんだろう。



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