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翔(天から舞い降りる美しきハンター)

(しょう)は、(よう)が産んだ女の子だった。妊娠期間はおそらく六ヶ月ほどで、先にも言ったが人間の感覚で言えば完全に超未熟児って感じで生まれつつも、彼女達の場合はこれで正常らしい。手の平くらいの大きさしかないのにすごい力で掴まり、指を掴まれた時には骨が折れるかと思って『いでぇっ!!』って声を上げてしまったりした。


しかし彼女らにとってはそれは必要な能力だった。母親である(よう)の胸にしがみつき振り落とされないようにする為だったようだ。母親の羽毛をぎゅっと握り締めておっぱいに吸い付き、殆ど片時も離れなかった。


そうして一気に成長し、それでも子供達の中では一番体は小さいが、羽が生え揃い滑空ができるようになった頃には既にハンターとしての風格さえ漂わせていた。母親と同じようにローバーのルーフキャリアに陣取り、鋭い視線で油断なく辺りを見回し、時には襲い掛かってきた。


足の爪は(よう)に比べればまだ鋭さも大きさも知れているが、加減せずに掴まれると簡単に肉に食い込んで出血さえする。


一応、俺達のことは仲間だと認識してるらしく手加減はしてくれてるようだ。それでも咄嗟の時などには力加減を間違えるらしく爪に抉られて酷い目に遭う。俺もこれまで数回、それで流血の事態に見舞われている。


その被害に一番遭っているのは、(かい)だろう。(しょう)も何故か(かい)が気に入ってるのか、彼が視界に入るとほぼ毎回、襲い掛かってくる。その所為で何度か血まみれになっていたこともあった。


そんな状態でうずくまってたのを見た時なんかは、


(かい)! (かい)ぃぃっっ!!」


と悲鳴っぽい声まで上げてしまったこともある。実際には見た目ほど重症って訳でもなかったらしく、本人も単に眠たくなったから寝てただけらしいが、まったく心臓に悪い。


(しょう)はその時、うずくまってる(かい)の体と言うか血を舐め取ってるようだった。我ながら、よく、(しょう)のことをひっぱたいたりしなかったものだと思う。もっとも、俺の平手が当たるとも思えないが。


人間で言えば<暴力ヒロイン>ということになるのかもしれない。とは言え、これもあくまで彼女達にとっては必要な<練習>なんだ。生きるため、身を守るため、闘うためにな。人間の尺度で測っちゃダメなんだと自分に言い聞かせる。


かつては人間もそうだったんだろう。人間の中に残る暴力的な衝動は、そのためのものなのかもしれない。だが人間は、互いに協力し手を取り合い協調することで群体のように多数が集まって生きることを選んだ。


群れは形成したりするが基本的には個々の能力で自らの力だけで生きることが必要になる彼女らとは、根本的に別の種なんだなというのを改めて思い知らされたのだった。



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