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明編 印象操作

『子供をこの世に送り出した張本人なんだからその責任を負う』


自分が子供を持ったからこそ俺はそう思うんだが、残念ながらそう思えない人間がいるというのも、<心>があるからなんだろうな。だからそれに対してもただ『親の義務だろ!』と押し付けるだけでは上手くいかないんだろう。


その辺りを、今はメイトギアが補ってくれているんだ。これにより、事件に至る例は確実に減っている。ロボット排斥主義者達のコミュニティの方が犯罪発生率が高いという事実がそれを裏付けている。ロボット排斥主義者達のコミュニティに生まれ育った人間が他の地域で事件を起こすというのもある。


もっとも、当のロボット排斥主義者達はそれを、


『恣意的な統計による印象操作だ!』


と言って反発しているそうだが。


加えて、


『人間が被害者になるところをロボットが身代わりになっていることで被害者数が少なくなっているだけ。しかもロボットが被害を受けた事件については当事者間で示談にして認知件数としてカウントされていない例も多い。なので我々のコミュニティとロボットに依存したそれらとの間で、実際の事件発生件数に大きな差はない』


とも主張しているそうだ。


いやいや、身を挺して人間を庇うのもロボットの役目なので、もしその主張が正しいとしても、むしろ『ロボットが人間を守っている』という意味ではきちんと役に立ってるという裏付けになると思うんだが。


なるほど確かに、今なお、凶悪事件はゼロにはなってない。それは事実だ。


ただこれは、メイトギアをはじめとしたロボットには心がないので、残念ながらやはり完璧じゃないということでもあると思う。つまり結局のところ最後は人間自身の力で解決していくしかない問題ということか。


また、どれほど策を講じても、まるでエアポケットのように、それこそ悪魔か何かが仕組んだかのように対策が届かない事例というのは、どうしてもなくならないんだという。


そうして発生した不幸な事件がメディアやネットを通じて大きく取り沙汰されるので、凶悪な事件が頻発しているかのような印象も与えるようだな。


実際には、人口当たりの犯罪発生率は、間違いなく二十一世紀初頭頃よりも減ってるというのに。


これは、メディアやネットが急速に発達した二十一世紀初頭頃にも見られたものらしい。実際の事件発生率はそれ以前よりも明らかに減っているにも拘らず凶悪な犯罪はむしろ増えているような印象を多くの人間が持っている状況というのは。


そして、


『この世界には辛く苦しく悲しく痛いことが多すぎる。だからそんな世界に子供を送り出すのは可哀想だ』


と考える人間はその<印象>を自分の考えの根拠にしているようだ。



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