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明編 理屈

なんてことを考えてると、なぜ野生では同族殺しは<命で贖わなければならないほどの罪>にならないのに、人間社会では『命でもって贖え!』とされるのかということの説明もついてしまう気がする。


とにかく、


『同じ人間同士で助け合わないと生きていけない』


という脆弱な人間にとっては、


<人間社会を構成し、相互扶助の役割を担うことになる人間を害するという行為>


が、


『人間社会そのものへの攻撃に等しい』


と考えることができるんだろうな。


『人間社会を成立させる為のリソースを奪う』


形になる。だから、禁忌とされる。


こう考えると、戦争時に<敵>を殺すことが認められてしまうことも説明できてしまうか。


なにしろ相手は、


『自分達の人間社会を害そうとしている』


わけだから、その脅威を排除するためには必要とされるということで。


『そんな小難しいことを考えなくても、自分の家族とか殺されたりしたら許せないだろ!』


とか言うのもいるかもしれないが、その理屈だと、


『じゃあ、自分の家族以外の、どうでもいい人間なら殺してもいいのか?』


とか、


『自分自身以外に大切な人間なんかいない!』


って言われたら、説明できないからなあ。


ただし、俺の考え方でも、


『じゃあ、社会の役に立ってない奴は殺してもいいんだな?』


なんてツッコんでくるのもいそうだな。


しかし、そのツッコみには、まず、


『社会の役に立っていないというのが果たしてどこまでを言うのか?』


って問題がある。


役に立っていない者とは、誰を指すのか。


赤ん坊は? 幼児は? ニートは? 寝たきりの人間は?


それらは、一見しただけでは、働いていなくて社会的な役割は担っていないようにも見えるかもしれない。


だが、赤ん坊や幼児といった子供を含む、


<誰かのモチベーションの基になっている人間>


は、そういう意味では『役に立っている』とも言えるんじゃないだろうか。


では、家族から疎まれているニートとかはどうだ?


しかしこれも、果たしてその人間が将来にわたって一切何の役に立たないままで終わるということが立証できない以上は、『役に立たない』と断じることはできないだろうな。


そして、寝たきりとなった高齢者はどうだろう?


だがこれも、現役の頃には社会に何らかの形で貢献してきたのであれば、役割を担ってきたのであれば、その働きを労うという意味も込めて安らかに残りの時間を過ごしてもらってもいいんじゃないかと俺は思うし、そう思う人間がいる以上、不要と断じてしまうこともできないと思うんだ。


ましてやその身を案じる誰かがいるなら。


俺の妹だって、光莉(ひかり)だってそうだ。俺はあの子のためにそれこそ必死で働いてきた。あの子の存在が、俺のモチベーションであったことも事実なんだ。


だから、難病を発症し、仕事になんか一度だって就いたことのなかったあの子を、


『役に立ってないんだから死ねばいい』


とか言う奴がいたら、俺がそいつを殺してやりたいと思うよ。



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