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明編 角

その日も(さく)は、(めい)の姿を求めて縄張りへと侵入してきた。必ずしも遭遇できるわけじゃないが、それは(さく)も分かってるだろう。


ただこの日は、(めい)に会えないだけじゃなかった。


(さく)の前に現れたのは、(めい)ではなく(かく)だった。


「マズい……!」


ここまでは、相手が(めい)だったから(さく)は生き延びられた。彼女に勝てない彼が(かく)を相手にして勝てる道理がない。


(かく)を止めろ!」


本来なら、俺の家族じゃない(さく)を守る理由はなかった。ぎりぎり、(めい)のパートナーである(かく)までだ。だから、近付いてるのは分かってたが、出くわさない可能性の方が高いから敢えてそのままにしていた。


のはずだった。だがこの時の俺は、(さく)を守るために咄嗟にそう命じてしまった。


名前まで付けてここまで見続けていたことで、情が移ってしまったんだろうな。


まったく…俺は本当にいい加減な奴だよ……


だが、そんな俺の想いは、(かく)には届かなかった。


これまでにも何度もドローンに邪魔をされてきた(かく)は、その対処法をすっかり承知してしまったようだ。


自分に接近してくるドローンを先に叩き落とした上で、(さく)に迫る。近くにいた他のドローンを向かわせる前に、既に戦いは始まってしまっていた。


「くそっ!」


つい声を出してしまった俺だったが、しかしこの時、(さく)は一撃ではやられていなかった。


それどころか逆に、(かく)の脇腹に右膝を叩きこんでいるところだった。何事かと思ったが、すぐにピンときた。


(めい)の戦い方か……!?」


そうだ。ここまで何度も(めい)に撃退されたことで、彼女の戦い方を学んだらしい。


さすがに抜け目ないな。


しかし、思わぬ反撃に(かく)も面食らったようではあったものの、彼も何度も(めい)の戦いぶりは見てきてるので、それと同じものだというのはすぐに察したようだった。


そうなればもう、(かく)の方が経験も地力も上だった。(さく)の反撃によってドローンは間に合ったが、その突撃を意にも介さずに、(かく)の鎌は(さく)を捕らえ、動きを封じたところで、彼の顔面に、でかいハンマーのような頭突きを食らわせた。


ガゴンッ!!


と、およそ生物同士がぶつかったとは思えない音が響き、がくんと(さく)の膝が折れた。脳震盪を起こしたのだろう。


「くそっ!」


(さく)を見下ろす(かく)の目には、冷徹な殺意が込められているのが俺にも分かってしまった。


さらにドローンを突撃させるが、(かく)にとってそれは蚊が刺したほどのダメージにもならないことはもう悟られてしまっている。


止める手段はもうなかった。


(かく)は少しも躊躇することなく、朦朧となった(さく)の顔を上に向かせると、もう一度、今度は思い切り体重を乗せて、


ガゴキャッッッッ!!!


と、頭を叩きつけたのだった。



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