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明編 失態

新暦〇〇二八年九月十日。




まあとにかく、(めい)を見守ってはいるんだが、正直、どこまでやればいいのか、どこまでやっていいのかっていうのはいつも悩むところである。


(がく)の一件でも感じたとおり、(ほまれ)達は自分の力で結構しっかりやっている。俺が守ってやるなんてのは思い上がりだと改めて感じたのは確かだが、しかしそのおかげで助かったという事例があるのも事実なんだ。


実際、(めい)(かく)の子である(えい)が生まれたばかりの頃、(めい)は危うく(えい)を死なせるところだったということがあった。


その時点ではまだ母親として未熟だったこともあって、(えい)の存在が頭からすっぽり抜け落ちてしまったらしい。


(えい)が生まれてまだ一ヶ月程度しか経ってなかった頃、縄張りに侵入してきた他のマンティアンに気付いて戦いになりかけたんだが、そちらに気を取られていて(えい)がそのマンティアンのすぐそばにいたことを忘れてしまってたんだ。


それに気付かれて(えい)が襲われそうになって(めい)も助けようとしたものの間に合わなかったのを、ドローンが突撃して気を逸らしたおかげで間一髪救い出すことができたというな。


野生の場合、そうやって我が子を死なせたというのも経験として次に活かすという形になるのかもしれないが、人間はそう簡単に割り切れない訳で。


こういうことがある以上、見守りをすべてやめてしまうところまで割り切れないのも事実ではある。


そんなこともありつつも(えい)も今では立派に育ち、もう自分で狩りもできるようになった。いつ完全に巣立っていってもおかしくない状態だ。


と言うか、年齢を考えたらとっくに巣立ってないとおかしいんだけどな。


既に自分で寝床も確保してるものの、さりとて(えい)が自分の縄張り内をうろつくことを(めい)(かく)が許している間は、実は完全な<巣立ち>じゃない。


これが、本気で殺そうとするくらいに襲い掛かろうとするようになれば一人前として認められた証拠と言える。


何度も言うが、マンティアンは孤高のハンターだ。(めい)(かく)が一緒に暮らしているのはあくまで子孫を残す為に互いに相手を利用してるに過ぎない。その価値がないと見做されればすぐさま見捨てられて<狩りの対象>になるのが現実だ。


ただ、(えい)は少々性格が優しすぎるかもしれない。能力は両親譲りで決して低くないものの、獲物と対峙した時に問答無用の殺気みたいなものが伝わってこないんだ。


とは言え、だからといって手加減するとかそういうわけでもない。一撃必殺の攻撃で確実に仕留めるから実際には何も問題ないものの、それでも、な。



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