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明編 鵺竜

この惑星に生息してる<恐竜によく似た動物>については、正直、まだ台地の麓の生物の調査までは手が回らなかったから上空からの簡単な調査しかしてなかったものの<恐竜>とはやはりあくまで別の種だということもあり、<鵺竜(こうりゅう)>と呼称していた。


簡単な調査でも、地球に生息したという恐竜よりもどうやら知能が高く『少なくともサル(チンパンジー)に匹敵する』ことは推測されていたから、


『サルの頭(知能)を持つ』


という意味で、<(ぬえ)>の字を当てさせてもらったんだ。


ただし、(がく)も便宜上<鵺竜(こうりゅう)>に分類したものの、今回の件を受けて改めて調査したが麓の鵺竜(こうりゅう)には<タングステン並みの強度を持つ鱗>などは生えていることは確認できず、やはり(がく)の方が特殊だというのは推察されている。




なんてこともありつつも、今日も(めい)の様子を確かめさせてもらう。


すると(めい)は、(かく)との巣である、かつてイレーネを捕食した鵺竜(こうりゅう)の亡骸からするりと姿を現したかと思うと、つい、と密林の緑に溶け込むようにして姿が見えなくなった。


しかし、ドローンのカメラは赤外線や紫外線も捉えることができる上に、人間のように錯覚を起こすことがないので見失うことはあまりない。


それでも、『まったくない』わけじゃないのが、マンティアンのすごいところかもしれない。彼女らは頭もよく、<死角>というものを本能的に理解しているのか、それをうまく利用して、ドローンを振り切ってしまうこともある。


とは言え、監視網も兼ねた大量のドローンからは完全には逃れられず、だいたいどれかに引っかかって発見されるんだが。


ドローン自体、常に飛行させていては電気の無駄なので、追跡用のそれを除けば、多くが木の枝や幹などに取りついて、通常の監視カメラ代わりに周囲の映像を捉え続けてるだけだ。さすがにそれらすべてから隠れることは難しい。


『盗撮だ!』という意見もあるかもしれないが、ロボットが一家に一台どころじゃない騒ぎで普及している今の人間社会では、<カメラ>が存在しない環境の方がむしろ珍しく、この辺りの線引きが非常に難しい。


要は、『悪用さえしなければいい』という形で割り切っている感じだろうか。


なにしろそれのおかげで犯罪やテロの多くが未然に防がれたり、大きな被害になる前に早々に対処できるというメリットの方が大きい感じかもしれないな。


ただし、他人のプライベートスペース、つまり<家の中>などを故意に撮影していてはさすがに犯罪になる。


だから俺も、(めい)(かく)の巣の中までは覗き込まないようにしている。


もっとも、パパニアンのそれのように、壁も屋根もない、周囲から丸見えの場合には、見えてしまうから仕方ないっていう面もあるけどな。


一応、葉のついた枝などを使って多少の死角は作るようにしてるようだが、実際には、


『頭隠して尻隠さず』


状態だったりするんだよ。



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