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明編 備え

マンティアンは冷酷無比なハンターではあるが、同時に頭のいい動物でもある。


人間である俺の下で育った(めい)(じょう)だけでなく、他の普通のマンティアンも、それは同じだ。


これまでの観察で、不思議と、自分達が獲物としている動物の群れの<拠点>となる場所に現れて狙うということはあまりないことも分かっている。


どうやらそれは、拠点としている場所で襲うことで群れそのものがどこか別のところに拠点を移してしまうことを避けるためにそうしているらしいというのも分かっていた。


でないと、獲物になる動物が自分の縄張りからいなくなってしまう可能性があるからだろう。


そもそも、パパニアンなども獲物とはしているものの、食べる量そのものは、俺達人間の感覚からすれば<大食漢>と言える量ではあっても、それこそパパニアンを捕えれば全部は食べ切れずに大部分を残して放置したりもするので、群れを根こそぎ食べ尽くすということもないんだ。


この点からも、グンタイ竜(グンタイ)の生態がいかに異常だったかが感じられるな。地球のグンタイアリのような微小な生物であれば、


『出会った獲物は根こそぎ食らい尽くす』


的なことをしていてもバランスは保てるにしても、グンタイ竜(グンタイ)サイズであれだけの数でそんなことをしていては、あっという間にその活動範囲内の生態系は崩壊するだろう。


結果として駆除するしかなかった例だったかもしれない。


もしくは、獲物を狩り尽くして周囲の生態系を破壊して自滅するのを待つかといった感じだっただろうか。


もっとも、そっちを選んでたらこの台地の相当な部分が致命的なレベルで生態系が破壊されていた可能性もあっただろうが。


グンタイ竜(グンタイ)のような生物が二度と出てこないことを祈るよ。


(がく)のような大型の<鵺竜(こうりゅう)>(地球の恐竜にすごく良く似てる)がもし、グンタイ竜グンタイと同じ生態を手にしたら……


いや、それはさすがに自滅が早まるだけか。あのサイズでそんなことをしていてはな。共食いもする奴らだから、手近に他に獲物がいなくなれば共食いが始まるのは目に見えている。


動物の死体を主に食らう<腐肉食らい(スカベンジャー)>はともかく、生きた獲物を狩って食らう<捕食者(プレデター)>はあくまで捕食される側よりも確実に数が少ないことでバランスが成立するんだから。


いずれにせよ、(がく)を倒したことでさらに強力な生物が現れる可能性は否定できない。ただしそれはあくまでこれまでの事例から導き出される推論の一つでしかないので、実際にはどうなるか現状では分からない。


その予測が結局は外れている可能性だって十分にある。


ただ、それに対する備えはしておかなきゃな。



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