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誉編 最弱

(ほまれ)達が去った後、俺はエレクシアとイレーネを待った。


正直、疲労困憊という感じだ。俺自身はほとんど何もしてないが、状況を見守っているだけでごっそり神経を削られたよ、


だが、それと同時に(ほまれ)達の<強さ>も実感できた。


(がく)のような非常識な存在が相手だとさすがにエレクシア達の協力がなければ大きな犠牲も出るだろうが、群れそのもので連携して強敵に立ち向かうという知恵がある限り、普通の天敵相手ならこれからも自分達の力で何とかしてくれるんじゃないだろうか。


これまでも基本的にはそう思っていたものの、正直、どこか信じ切れてなかったのも本音だった。


なにしろ、親にとって子供はいつまで経っても<子供>だからな。


そういう部分で、『子供だから』っていうフィルターが掛かってたんだろう。


今後は、今まで以上に気にし過ぎないようにしよう。あいつらのことはあいつらに任せよう。


と、自分に言い聞かせることになるだろうな。今まで以上に。


なにしろ、子供がいくつになろうがついつい心配してしまうというのも親心というものだろうし。


そんなことを考えているところに、


「ただいま戻りました」


と声が掛けられる。エレクシアとイレーネだった。


「お疲れ様。無事でよかったよ」


ロボットだから疲れる筈がないんだが、ついそう言ってしまう。こうやって労いたくなってしまうのも人間ってものじゃないかな。


しかし、エレクシアは、


「ダメージは許容範囲内です。問題ありません」


と、素っ気ない。


だが、それに続けて、


「ですが、ありがとうござます」


とも言ってくれた。それがまた俺にとっても心地好い。


そうか…相手を労うことで自分も癒されるんだな……


そんなことも思ってしまう。でもそれは、エレクシア達が、そう感じるに値するほどに俺達に献身してくれてるからというのもあるんだろう。


ローバーのドアを開けて乗り込もうとするエレクシアとイレーネに、彼女達の強さを知らないボクサー竜(ボクサー)達が襲い掛かるものの、それをハエでも追い払うかのように軽々と退ける。


俺がもし、ローバーの外に出ていたら同じように襲われて、しかし彼女達のようには退けられなくて、下手をすれば命を落としていただろう。


つくづく、俺はここでは、シモーヌと並んで最弱なんだろうなと感じるよ。


とは言え、(ほまれ)だって決して『強い』と言えるほど強くはない。パパニアンの中ではおそらく強い方の部類に入るだろうとはいえ、マンティアンを相手に真っ向戦えば一分ももたないに違いない。


それでも、あいつはちゃんと自分の群れを守ってる。


<パパニアンのボス>として、しっかり役目を果たしてる。


家に戻るローバーの中で、メイフェアのカメラに捉えられている、(あお)(みこと)を従えつつ群れの仲間の無事を確認しようとでもするかのように見渡している(ほまれ)の姿を見ながら、俺も頑張らなくちゃいけないなと改めて思わされたのだった。



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