誉編 咆哮
エレクシア、メイフェア、イレーネ、誉を筆頭としたパパニアン、|マンティアンの明と丈、アクシーズの翔と彗ら<連合軍>の波状攻撃を受け続けた嶽は、さすがに疲れを見せ始めていた。
だがそれでも、頭部や腹部といった動物なら普通は弱点となる部分への容赦ない一撃を、その巨体に似つかわしくない柔軟で流れるような動きでもって衝撃を受け流し、致命傷にならないようにしているのが分かり、改めてとんでもない奴だと実感させられる。
左右同時に挟み込むようにして食らわしても、何層にも重なった鱗状の皮膚が緩衝材の役目をして十分に威力が伝わらない。
こうなるといよいよ、<対メイトギア用生物兵器>じみてくるな。
普通のロボットの方がよっぽど戦いやすいんじゃないか?。
なんて感心してる場合じゃないが。
しかし、やはり生物は生物。ことスタミナという点では機械には敵わない。
また、エレクシア達メイトギアだけじゃなく、誉達まで加わって、周囲を飛び回る蜂のように気勢を削いでくる。
もしかするとそういう部分では、嶽にとっても想定外だったのかもしれない。
エレクシア達だけが相手ならまだ上手く戦えてたんじゃないだろうか。
俺達の、いわば<結び付き>が、嶽にとっては不運だったんだろうな。
すると、好機とみてか轟がそれまでより踏み込んだ位置にまで近付いて、手にした石を思い切り投げつけた。
だがさすがにそれは無謀だった。十分な射程距離内にまで近付いた轟目掛け、嶽はグワッと口を広げて食らおうとする。
タイミング的には完璧だっただろう。そのままであれば、轟は綺麗に頭から嶽に食らわれて終わるところだったに違いない。
が、メイフェアがそれを許さない。
誉を散々煩わせた轟のことを、メイフェアは快く思っていなかった。しかしそれでも、彼女は自らの役目を忘れない。なにしろ、轟を援護するために誉と昴が近付いてきたのだから。誉を守るためにも、メイフェアは轟を死なせるわけにはいかなかった。
彼女の渾身の蹴りが嶽の顎を捉え、瞬間、嶽の巨体がぐらつくのが分かった。
疲れ始めていたところに最高の角度で入ったようだ。
それが、嶽の判断を狂わせたのかもしれない。
メイフェアを食らおうと頭を振ったところに今度はイレーネの全力の掌打を腹に受け、ガクンと膝が折れそうになる。
それでも踏み止まった嶽が、
「ぐぅおああああぉあぉおおおぉああぁーっっっ!!」
と、まるで衝撃波のような咆哮を放つ。
動物が相手なら、それは十分な威力があっただろう。現に、誉達は、一瞬、電気にでも打たれたかのように体を硬直させたからだ。
けれど、エレクシアにとっては絶好のチャンスとなったのだった。




