誉編 狙撃ポイント
『自分達を守れ』
エレクシアはただそう命令してくれればいいと言う。
それがロボットというものだから。
だが、こういう時は、つい、『ロボットにも人権を!』と叫ぶ活動家達の気持ちも少しは想像できてしまう気もするんだよな。
だから俺は、エレクシア達を使い捨てにはしない。道具としては使うが、大切な道具として使わせてもらう。
そうしないと、俺は自分が許せないだろうからな。
そんなことを考えている間に、密林のはずれ。植生がジャングルから草原へと変わる間際の辺りへと到着した。
嶽は、この先、二十キロの辺りにいる。そしてやはり、不規則な動きながらこちらに近付いてきていた。
それでもまだ、どこか別のところへ行ってくれることを期待している俺がいるんだ。
そうなるのが一番だと願いながら、キャンプの準備をする。
と言っても、俺は安全のためにローバーの中で寝るだけだから、エレクシアが狙撃ポイントを選定するのを見守っているしかできないが。
この辺りは、密林に住むマンティアンやパルディア、ボクサー竜だけじゃなく、草原に住むレオンやオオカミ竜からも狙われる危険性のある、結構危ない場所だった。
そんなところでただの人間の俺が呑気にキャンプをしていては命がいくらあっても足りないから、ローバーからは基本出ない。
俺を守ることにエレクシアのリソースが割かれては本末転倒だ。
ことが終わるまで俺は、ここで<いい子>にしてなきゃな。
「狙撃ポイントの候補を三ヶ所まで絞り込みました。後は実際に嶽が接近してきた時の状況に合わせて最終的な選定をします」
タブレットを通じてエレクシアがそう告げてきた。
「分かった。よろしく頼む」
端的に応えて俺はローバーの助手席に座り直した。
窓から外を見ると、密林の木の陰に、白い影がちらほらと見える。パパニアンだ。もちろん、誉達とは別の群れだが、好奇心の強い彼ららしく、見慣れないものがあるから様子を窺いに来てるんだろう。
パパニアンだけじゃない。ボクサー竜もさっきから周囲をウロウロしているのが分かる。警戒はしつつもこちらの正体を探ろうとしてるんだろうな。
ま、こっちからは特に何かするつもりはない。エレクシアはさっきから、ボクサー竜に狙われたりマンティアンに狙われたりしているようだが、当然、まるで意に介していない。
むしろ、怪我をさせないように追い払うのに手間を取られているだけだ。
そんなことをしながらも、しっかりと狙撃ポイントを確認してるんだから、本当に大したもんだよ。




