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誉編 最高のパフォーマンス

エレクシアの<予測>に吐き気すらもよおしてしまった俺だったが、今さら後に引けないことは承知していた。それに、


「その予測が当たっているという確証がないのも事実なんだろう……?」


祈るような気持ちで問い掛ける。するとエレクシアは、


「はい。ご指摘の通りです。これは現時点ではあくまで可能性の話でしかありません。たまたまそのような事例が続いているという可能性も否定はできません。


悲観的に想定するとすればそのようにも解釈できるというだけですので」


と答えてくれた。それで少しだけ気が楽になる。


「……分かった。その可能性があるとしても、それは今回の件が終わって、また次の事例でどうなるかを見てから考えよう。


どうせもう既に、<電磁加速質量砲(レールガン)>を使わなきゃいけないような状態にまで至ってるんだ。(がく)の駆除を諦めて他の形で対処しようにももう手に負えない状態になってるからな」


胃がキリキリと悼むような感覚を味わいながら俺は努めて冷静を装いつつそう応えた。自分自身に言い聞かせるように。


そんな俺に対してエレクシアも、


「マスターの判断に異を唱える必要は現時点ではないと判断します。


駆除するごとに強くなっているのだと仮定して、駆除以外の方法を取るのであれば、(みずち)が発生する以前にそのようにするべきだったでしょう。


それに、いくら強力になっていったとしても、生物である以上は限界があります。現状の装備であっても、私とメイフェアとイレーネの三体が連携すれば、理論上は撃破できない生物は、ごく一部を除いて存在しえません」


と言ってくれた。ただ、やはり気になる点が。


「ごく一部の例外…?」


訊き返す俺に、


「あの不定形生物のような存在を除いてということです」


とのことだった。


なるほどそれは道理だ。


あの不定形生物は不定形であればこそ倒しきれないのであって、それが決まった形を取ってしまえば、生物である限りエレクシア達の力で破壊できないものは、理論上はないだろう。


何とか対処する方法はあるということだ。


「とにかく、今後のことは、推測が正しかった場合に考えることにすればいいな」


「はい。それでいいと考えます。


マスターは、命じてくださればよいのです。


『自分達を守れ』


と。そうすれば私達は持てる機能を最大限に活用してその役目を果たします。私達はその為に存在するのです。


そして、それを果たす為に開発者達は努力を続けてきました。


私達は、人間の信頼に応える為に最高のパフォーマンスを発揮します」


淡々と、しかし澱みなく応えるエレクシアに、俺は自分が落ち着いていくのを感じていたのだった。



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