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誉編 順調

(ひかり)の胎内に宿った命は、すごく順調に育っていた。


セシリアによる検診の結果、


「おそらくあと五ヶ月ほどで十分な大きさにまで成長すると思われます」


ということは、実質的な妊娠期間は八ヶ月ほどか。


やはりその辺り、パパニアンとしての形質も受け継いでいるんだろうな。なるべく妊娠期間を短くし、危険を減らそうという野生なんだろう。


まあそれについては、植民惑星に入植した人間でも、その地で採れる食物や環境の影響もあってか、微妙な差異が生じることはあるらしいから、このことだけでは、


「人間とは別種の生き物」


と判断されることはないが。


なお、既に(まどか)が普通の食事もとり始めてることもあって止まっていた(ひかり)の母乳も、また出始めたようだ。しかも今度は、本当に妊娠したからか、かなりの量で。


すると、明らかに一目で分かるくらい、胸が大きくなっていた。


それを見た(あかり)が、


「うわ~い♡ ふっかふかのふっかふか~♡」


などと、(ひかり)の胸に顔を埋めていたりもする。


まあ、仲がいい分には構わないので、好きにさせておこう。


だが、そうやって俺達が新しい家族の誕生(予定)に湧いている裏で、エレクシアが母艦ドローンから送られてきた映像を解析、いつものように事務的に俺に伝えてきた。


「母艦ドローンNo.9が、要警戒と思しき生物の映像を捉えました。確認いたしますか?」


そう言われて確認しない理由もないので、


「分かった。頼む」


と伝えると、俺の手元のタブレットに映像が映し出された。


「…!?」


それを見た瞬間、ほころんでいた俺の表情が強張るのが、自分でも分かってしまう。


オオカミ竜(オオカミ)…じゃないな……? なんだこの大きさは……?」


思わず呟いた俺のそれに、シモーヌもただ事じゃないと気付いたらしく、タブレットを覗き込んできた。


「これは……鵺竜(こうりゅう)…?」


シモーヌが言った通りだった。<鵺竜(こうりゅう)>だ。この台地には本来いない筈の、大型の、地球にかつていたという恐竜によく似た生物。


「全長約八メートル。体重約二トンと推定されます。ですがこれでもまだ、<下>に住む鵺竜(こうりゅう)に比べれば小型でしょうが」


確かに。この台地の果て、一千メートル級の切り立った崖の下に生息する鵺竜(こうりゅう)は、全長二十メートル級のがゴロゴロいる。タブレットに映し出されている奴は、それよりは明らかに小柄だ。しかし、これはまだ成長途中にある可能性もある。しかも……


「汚れちゃいるが、こいつの体も透明っぽいな。やっぱりあの不定形生物が変化したものか……?」


「映像を解析した結果、その可能性は高いと思われます」



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