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誉編 光と順

「ここがお前達の新しい家だ」


(ひかり)はまあいちいち説明する必要はないが、(じゅん)はまだまだ人間としては幼い子供同然なので、ちゃんと説明してやらないといけない。


「いえ……」


俺の説明に、いまいち分かってるのかどうなのか分からない反応で(じゅん)が呟いた。


そんな彼に、(ひかり)が、


「あ、あうあ」


と話しかけた。


『私とあなたの新しい<巣>だよ』


パパニアンとしての<言葉>でそういう意味らしい。


(じゅん)も、<家>というもの自体は既に認識してるものの、自分が何もしてないのに、突然、大きく立派になったことが理解できないらしい。本来、<家>という概念自体がなかったからな。


それでも、


「いえ…! ひかりとぼくのいえ……!」


(ひかり)に説明してもらってようやくピンと来たらしい(じゅん)が、少し興奮気味に声を上げた。


まあ、実際には(まどか)が遊べるスペースを確保するためというのもあって『二人だけでゆっくり』とはいかないものの、今まで以上にパーソナルスペースが確保されるのは間違いない。前の<仮設の家>は(あかり)の個室になった。


パパニアンとして育った(じゅん)はともかく、人間として育った(ひかり)は、本人は特に気にしていないつもりだったらしいが、それでも他の家族がいることで、どこか遠慮があったようだ。


前の仮設の家ではどうにも声がダダ漏れだったから、睦み合う時には光莉(ひかり)号の中でってことにしてたとはいえ、な。その点でも、よっぽどの大声でなければ大丈夫だぞ。新しい家は。




で、まるでそれを証明するかのように、新しい家で暮らし始めて二ヶ月ほどで、


「赤ちゃん、できたみたい……」


だと。


すると(あかり)が、


「お姉ちゃん、現金~♡」


と、少し冷やかすように指で腕をつついていた。


そんな(あかり)に、(ひかり)が顔を真っ赤にする。


まあ、今までは光莉(ひかり)号の中だけでだったのが、新しい家ででもってことだな。正直、ゆっくり落ち着いてできたんだろう。(まどか)(あかり)に任せて。


(あかり)にはさすがに気配が察せられてただろうが、彼女も一応、(じゅん)の嫁候補なわけだし、加えて、(ほむら)(さい)(あらた)(りん)の件ですっかり慣れてたから、別に気にもならなかったようだ。


でもまあ、とにかく待ち望んでいたことではある。


(まどか)もある程度、自分のことは自分でできるようになったし、いい頃合だろう。


俺達の<群れ>にも、また新しい家族が増える。


「また忙しくなりますね」


シモーヌもそう言いながら、嬉しそうに目を細めていた。




だが、そうして俺達にとっては待望のニューカマーもありつつ、実はあまり好ましくない新しい命も、この台地で育っていたんだけどな。


まったく。まだまだ退屈はさせてくれないようだ。


正直、嬉しくないアトラクションではあるが。


できることなら勘弁してほしいものだよ。



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