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誉編 環境

などということを考えつつも、(たもつ)にボスとしての器がなかったとしても俺にとっては可愛い<孫>であることには変わりない。


そして、(たもつ)と違って、今なおレッド達を、一般的なパパニアンほどは恐れてない様子も見受けられるとはいえ基本的に<天敵>として警戒することをやめられない(みどり)も同じく俺にとっては可愛い孫だ。


確かにレッド達はもう危険ではないのかもしれない。しかし、レッド達と同じボクサー竜(ボクサー)である駿(しゅん)(ごう)達が俺達とは一定の距離を置こうとしているのと同じく、一律で(たもつ)と同じ距離感を持つ必要はないと思うんだ。


敢えて警戒を持ち続けようとする者もいて当然だと思う。


むしろそれが自然じゃないかな。


向こう見ずで冒険心に溢れた兄を心配する<妹>。


可愛いじゃないか。


それに(みどり)は、<お兄ちゃんガチ勢>という一面も持ちつつ優しい子だ。母親である(あお)のことも大好きで、彼女の真似をして群れの他の子の面倒を見てくれたりもする。


しかも、小さい子が危ないことをした時なんかには危険を顧みず助けに行ったりすることもある。


決してただ怖がりなだけの子でもないんだ。


そしてどこか(ひそか)の面影もあって、彼女の命が繋がってるんだなと改めて実感させられたりもするんだよな。


その事実が、彼女を喪った俺を癒してくれる。


こういう小さなことが積み重なって、大切な人を喪った痛みも和らいでいくんだろう。


人間は忘れる生き物だとは言うが、


<忘れることができる状態>


であってようやく忘れることができるんじゃないだろうか。


なにしろ、恨みをいつまでも忘れないのもいたりするじゃないか。そういうのは、『恨みを忘れることができる状態にない』ってことなのかも知れないな。


その点でも俺は本当に恵まれてる。


時間が経てば経つほど感じるんだ。この世界において(ひそか)達がどれだけ俺にとって大切な存在だったか。そんな彼女達を喪ったことがどれだけの痛手だったか。


だが、それでも俺は幸せを感じることができてる。


これはつまり、俺が今、


<幸せを感じることができる環境>


にいるということに(ほか)ならない。


彼女達の命が繋がってこうして俺を取り巻いているという事実が、その環境を作り上げてくれてるんだ。


そんなことを考えながらレッド達の孫達が遊んでる様子を眺めてると、幼い頃の(たもつ)が、たっぷり遊んで満足したのか、心配そうに自分を見詰めてた妹の(みどり)の下に戻り、そうして二人で密林の中へと消えていってたのも思い出す。


そんな光景も、<俺を取り巻く環境>の一部だな。


(ほまれ)も、自らそういう環境を作り上げていってるんだと思う。だからあいつはあんなに幸せそうなんだ。


いや、(ほまれ)だけじゃないな。コーネリアス号がある草原で暮らしてい(そう)(かい)(りん)もだ。


我が子の一人である(れん)を亡くした(しん)もそうだ。


みんなそれぞれ、自分の幸せを作り上げていってくれてるのがすごく感じられたのだった。



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