駿と剛の出逢い（運命的ではある）
ボクサー竜の群れのでき方について、駿のおかげでいろいろ分かってきたというのはある。
そうやって自ら群れを作っていった駿は、陸号機に守られていたことで餌が十分に摂れていたいたのか、一般的なボクサー竜よりも体格が良く、並の雄では駿には敵わなかった。
雄と出逢っても、
「ガアッ！！」
と一発威嚇し、
「ゴルルルルルル…！」
などと喉を鳴らしながら臨戦態勢をとる。
すると大抵の雄は、自分より体格のいい、超強気な彼女を前にしてビビってしまい、中にはその場に臥せて服従の姿勢を取るものさえいた。
たぶん、そういう意味でも＜男勝り＞だったんだろうな。
雌についても、他のボクサー竜の群れと縄張り争いで小競り合いになった時なんかに、そのまま駿の群れに鞍替えする形で合流するのがいたりもした。
強い群れに入ることで身を守り、かつ強い雄と出逢って子を生すというのは雌の本能なのだが、＜女傑＞とも言うべき駿が実質的なボスであった群れに合流するというのは果たしてどういう狙いがあったのか。はっきりした理由はいまだに判明していないが、非常に興味深い事例としてシモーヌは注目しているようだ。
そして、そんな駿達の前に現れたのが剛だった。剛は、体格こそは駿とそれほど差はなかったものの、彼女を超える超強気な性格で、かつ力も強かった。
「ガアッ！」
「ゴアアッ！！」
という感じで双方一歩も引く様子がなく、真っ向からぶつかり合う。
それまで出逢った雄と同様に力で屈服させて従えようとした駿と互角以上に闘い、その時には決着はつかずお互いに距離は取ったものの、どちらも縄張りを譲る気はなかった為、その後何度も衝突した。
しかし何度闘っても決着はつかず、それでいてどうもお互いに相手のことが気になりだしたのか、やがて衝突するだけじゃなく、距離はおきながらもそれぞれ相手を視界に捉える位置を維持しだしたんだ。
こうなると、男勝りで雄は力尽くで従えるものだと思っていたらしい駿としても、自分と対等以上の存在として認めるしかなくなっていったようだな。
で、気が付くといつの間にか剛をボスととした群れをつくり、しっかり子供まで作ってたと。
ただ、番になる前は駿に対しても強気だった剛は、どうも尻に敷かれるようになったのか、彼女が強気に出ると二～三歩下がるようになってたりもした。
これはあれか？ ＜かかあ天下＞というやつか？
とは言え、それで上手くいってるようなのでいいんじゃないだろうかと思う。
