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人間は、個であるうちは脆弱でも(群体化すると…)

現在の人間社会が同性愛の存在を基本的に受け入れているのは、それが<非婚化>と同じで、<一つの種が過剰に増えすぎないように生物に仕掛けられた抑制装置の一種>という認識が浸透したからというのもあるらしい。


二十世紀頃の地球で人口爆発が起こった原因の一つが、同性愛の存在を過剰に抑え付けようとしたことだと考える学者もいるそうだ。


正直、その説が正しいかどうかは俺には分からない。ただ、『かもしれない』と思わされる部分がない訳じゃないことも事実だな。もちろん、原因はそれだけじゃなくて複数の要因が絡み合ってのことだとは俺も思うが。


それと同時に、今の人間社会が理性的、抑制的になろうとしてるのは、個としての生物とみれば極めて脆弱な人間も、群体となれば異常な強さを見せるからというのもあるらしい。


だから、<覇道を是とする王>の存在については否定的にならざるを得ないそうだ。


つまり、多くの人間を惹きつけてやまないカリスマ性を持ち、我が強く己の欲望や願望や野望に忠実で、目の前にあるものすべてを奪い尽くし食らい尽くすタイプの<王>が多くの人間を率いて覇道を目指すと、惑星そのものの資源を食い尽くし自滅するからというのがもっぱらの定説だとか。


その<王>を戴く集団が百人千人単位ならまだしも、億単位の集団となって<覇道>を目指せば、大量発生して緑を食い尽くすバッタの如く何もかも根こそぎ食い尽くすことになる危険性を持つのが人間という生き物なのだと。


これがただのバッタなら、どれほど大量発生しても惑星全土を覆い尽くすことはできないが、人間の場合、どんな環境でも適応して定住し、そこにあるものを奪い尽くすことができてしまうみたいだな。


そう、人間は、個であるうちは脆弱でも、<覇道>を是として群体化して永続的に存在するには強すぎるんだ。


故に、種としてこれから後も生き延びる為の<戦略>として、調和型の生き方を選択することになった。


確かに、覇道を目指す王というのは、物語の中の登場人物として見ればカッコいいし憧れるしワクワクするが、ひとたび現実の世界で敵に回れば恐ろしい侵略者・略奪者として自分達を蹂躙することになる。


そういう訳で、今は、<覇道を是とする王>の存在は、現実世界には望まれていない。あくまでフィクションの中のキャラクターとしてのみ魅力的なんだ。


実はある植民惑星で、そういう人間が覇を目指し多くの人間を扇動して国作りをしようとしたが、数百万の犠牲者を出した上、側近の裏切りによって暗殺されるという最期を迎えたそうだ。


これ自体が既に三千年ほど昔、人間が宇宙に生息範囲を広げようとしていた黎明期の話だそうで、伝記をはじめとしたさまざまなメディアで取り上げられる題材になってるんだ。



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