蒼穹編 こんにちは
その蒼穹は、異母兄である未来や異母姉である黎明とも良好な関係を築いている。遠慮のないやりとりをすることもあるものの決して険悪なわけじゃないんだ。
それでいて一歩引いているような印象もある。
未来と黎明はそれこそ分かりやすく兄妹という感じなんだが、蒼穹はなんとなく<従兄妹>のような距離感かもしれない。まあそれ自体があくまで『俺がそう感じている』だけであって何か客観的な見解というわけでもない。具体的な根拠もない。
毎日のようにルコアのところで一緒に<勉強>もしてるし、その時の様子もよそよそしいわけでもないんだ。
母親の灯はかなり距離感が近く人懐っこい陽気なタイプなんだが、蒼穹はどちらかと言えば父親の久利生に似たのかもしれないとは感じるな。少し距離は置きつつだからといって冷淡というわけでもない。久利生の穏やかな感じに比べればいささか<無愛想>が勝ってるかもしれないにせよ、そこまで不快でもない。たぶん、強く拒んでるんじゃないのが伝わってくるからだろう。
なんとも不思議な印象だ。
そんな蒼穹が今日は、コーネリアス号に顔を出している。というのも、コーネリアス号のプラントで収穫された野菜の受け取りのために灯と一緒に来たんだ。
それくらいならホビットMk-Ⅱにでも届けさせれば済む話だが、これも自分達が食べているものがどのようにして作られているのかを知るために敢えてしてることだった。今日は蒼穹の番ということだな。
「ごくろうさまです」
コーネリアス号の管理を任されている桜華と鈴夏が声を揃えて出迎えてくれる。すると灯が、
「こちらこそごくろうさまです!」
<ノリのいい十代の少女>的な感じで敬礼しながら笑顔を見せるのに対して蒼穹は、
「こんにちは」
と、丁寧ではありつつ冷静な様子で応えた。そんな娘に、
「蒼穹ぁ、ノリが悪いぞぉ! 笑顔笑顔」
灯がツッコむ。しかし、
「ママが元気すぎるだけ。私は普通だから」
とマジレス。これには灯も、
「ぎゃふん!」
だと。でもまあ怒ってるわけでもショックを受けてるわけでもないんだ。いつものやり取りだな。
そこに、
「やあ、こんにちは。直接は初めましてだね。灯、蒼穹」
爽やかな感じで笑顔を見せながら現れたのはサディマだった。もうそれだけで場が和むイケメンぶりに思わず俺も苦笑い。
しかし灯は、
「お~! 実物はもっとイケメンじゃん。でも久利生のがさらにイケメンだけどな」
「にしし♡」という感じで悪戯っぽく笑う。が、
「こ、こんにちは……」
思わぬ表情を見せたのは蒼穹の方だった。




