キャサリン編 エピローグ
こうしてサディマはコーネリアス号の<自室>で新たな生活を始めることになった。彼がもし何も<仕事>をしなかったとしても俺達は彼を見捨てるつもりはない。ないが、そんな覚悟などどこ吹く風な感じで、彼はそれこそいきなり<朋群製AIの開発>に全力を注いでくれた。
本当に『今までのペースは何だったんだろう』と感じるくらいに途轍もないペースで作業が進む。しかしこれでも基礎部分が完成するまですらおそらく二~三年くらいはかかるだろうとみられている。それが完成してからようやく実際にAIを試験的に稼働させつつ問題点を洗い出しブラッシュアップを行っていくわけだ。
かつては早々にリリースして問題点が見付かる度に<補正パッチ>を提供したり<アップデート>を繰り返すことで対処していたらしいが、今はAIが与える社会的な影響を考えるとそんなおっかないことはできないからなあ。加えて他のAIによるチェックも厳しくて不十分な状態でリリースすると<ダメ出しの嵐>を食らうんだとか。ただし人間と違ってAIは『嫌がらせをする』『難癖をつける』なんてのはしないからあくまでも実際の問題点への対処でしかないが。
ここでは<地球人社会製AIによるダメ出し>を受けることになるだろうな。そこで下手に半端なことをするとそれこそ稼働できない状態にまで追い込まれることすらあるだろう。そうなるとまた一からやり直しになる。それは避けたい。
そこはサディマなら何とかしてくれるかなと思う。
とまあ、こうしてやっと<朋群製AI開発>の目途が立った一方で、キャサリンとサディマの件については端緒に着いたばかりだった。物語的には、
『ようやくプロローグが終わった』
感じかもしれない。だから商業作品でこんな展開だったらそれこそ<批判の嵐>だろう。でも俺は別に商業作品を作ってるわけでもないしな。ただただ俺の周りに起こっている出来事の記録を俺視点で残そうとしてるだけだ。商業作品にしたいなら他の誰かがすればいい。俺がそれを承諾するかどうかはまた別の話でありつつ。
なお、キャサリンの方はといえば、やっぱりサディマのことなどまったく覚えてもいないかのように日々を淡々と過ごしているだけだった。だが、それでいい。<人生>というのはそういうものだと思う。特別なイベントだけを抜き出して切り取ってパッチワークのように仕立て上がられたものが人生というわけじゃない。
生活というのはそんなドラマチックなものじゃないんだ。




