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キャサリン編 人間らしい浅ましさ

錬是(れんぜ)は家族を愛しているんだね」


(あお)の葬儀が滞りなく終わったところで、サディマがおもむろにそう口にした。これに対して俺は、


「そうだな。血は繋がってなくても<人間>ではなくても俺にとっては大切な息子をずっと支えてくれた親族だからな……」


正直な気持ちを応える。


地球人社会においては、たとえ<血の繋がった親戚>であっても感情の面で他人以上に距離がある場合も少なくないだろう。


『できれば関わりたくない』


と本音では感じている場合だって珍しくないと思う。縁あって親戚・親族になったというのにそういうのは残念だと思うものの、俺の親戚もそういう感じだったからな。そもそも両親自身がそれぞれの親戚とは距離を置くようにしてたらしい。特別問題があるような人物というわけじゃなかったそうだが、どうにも<一方的な押し付け>が強い人らではあったと俺も感じてる。<自分達が思う正しさ>を押し付けてくると言うか。


『こう振る舞うのが人として正しい』


みたいなのが鼻につく感じか。綺麗事を並べてそういうのを説いてくるんだよ。だがそのクセ、俺の両親が亡くなった時には俺と光莉(いもうと)については<公的な支援>に丸投げするつもり満々なのがすごく伝わってくる様子だった。


『思い遣りが大切』


『人間はお互いに支え合わないといけない』


的な綺麗事を散々口にしてきておいて実際に面倒が降りかかってきそうになったらそれだったんだよ。両親が関わり合いを避けようとしていた気持ちが分かる気がする。こういうのは本当にストレスになるし。


たぶん<悪い人達>じゃないんだよ。ただ、自分じゃやりもしない善行を周りに求めてくるってだけで。ああそうだ。<綺麗事>を並べるのは周りの人間が自分に対してその綺麗事を実践してくれるのを望んでるってことなんだってしみじみ思う。たぶん、自分達が俺や光莉(いもうと)のような境遇に陥った時にはこっちに対して、『思い遣りが大切』『人間はお互いに支え合わないといけない』的なことを口にしながらすり寄ってくるんだろうなという予感しかない。そしてそのために形だけの善行を実践しようとしてる感じか。


『これだけしてあげたんだからこっちが困った時には助けてね』


とでも言いたいんだろう。別にそんな大したことはしてないのにな。両親を亡くした俺と妹を、さらには難病を発症した妹とそれを支えようとした俺を、碌に助けてもくれなかったってのに。


実に<人間らしい浅ましさ>だとつくづく思うよ。



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