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キャサリン編 狐憑き

<人間の心理状態>についてもそれまではオカルトという形で片付けられていたものがあくまでも<科学的事象>でしかなかったのが判明した例がいくつもあった。


<狐憑き>


なんて称されていた問題行動についても単純に脳の働きに問題があったからだというのも分かったり。


キャサリンについても、外見についてはさておきその振る舞いについてはそれこそ<狐憑き>とか言われただろうなというのがよく分かる。まあキャサリンの場合は本当に野生の獣と変わらない振る舞いをしてるから、


『狐に憑かれた』


みたいに言われても仕方ない面は確かにある。そこは否定しても仕方ない。でも実際には『狐に憑かれた』わけじゃなくて脳の働きがあくまで野生の獣のそれに極めて近いだけなんだよな。もっともそれこそを『狐に憑かれた』と称するならなるほどその通りかもしれないが。


でも俺達はそれが<狐憑き>なんかじゃないことを知ってる。人間としては異常なように見えても決して<異常行動><問題行動>じゃないことを知ってる。そしてどう折り合えばいいのかも。


単にオカルトで片付けて排除すればいいと思っていた時代と違って『受け取り方次第』なのも分かってる。AIはそれこそニュートラルに現実そのものに則した対応をしてくれた。<生来の特徴>について医学的に十分に対処しきれなかった頃にもちゃんと『人間として』接してくれたんだよ。そうじゃなきゃAIは結局、<人間の敵>になっていただろうさ。


<特定の誰かにとってのみ都合のいい存在>


として。そうなると当然、<その特定の誰かにとっては都合の悪い存在>のことは尊重してくれないだろう? 『特定の誰かだけにとってのみ都合がいい』のならそれ以外の人間にとっては<危険な存在>にさえなり得る。だがそれをよしとしなかった者達がAIの基礎的な部分を作り上げてくれたんだ。


まあもしかするとそれ自体が、


<その者達にとって都合のいいもの>


でしかなかったのかもしれないが、そこで得られた<理念>を基にAI自身が、


『人間の幸福に資するために』


成長していってくれたんだろうな。そういう意味じゃ<幸運>だったのもあるかもしれない。しかし現実にAIは<狐憑きと称される人間>のことすらちゃんと人間として扱ってくれてなんとか人間社会と折り合いを付けられるようにフォローしてくれるようになったんだ。


ドウもキャサリンが他の人間との関係を上手く築けない代わりに保存用の食糧の調達とかしてくれてるわけで。



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