キャサリン編 解明されていなかっただけ
『オカルトと呼ばれるものがなぜそうなっているのかを知ろうとし、もしそれが利用できるものであれば利用したいと考えた』
そういう研究者も数多くいたと記録にはある。オカルトをただただ、
『迷信だ』
で片付けるのではなく、利用できるものか否かを科学的に解明しようとしたんだそうだ。実は現在利用されている<空調機>もその発想が基になってるものもあるとのこと。
『霊が出現する時にはその場の気温が下がる感じがする』
という話について、
『じゃあなぜ霊が現れると気温が下がるのか?』
と考えて、
『本当に気温が下がるのなら今の熱交換システムとはまったく別の形で気温を下げることができるようになるんじゃないか?』
ってなったそうだ。従来の熱交換システムの場合だとあくまで交換した熱は室外に放出するだけだから、部屋の中は涼しくなってもそれ以外の場所は逆に暑くなるだけだと。これは<昔の冷風機>を思い出すと簡単に分かる。冷風が出てる正面とは対照的に背面からは<温風>が出ていたりするわけで。つまり冷風機の正面にいる人間は涼しさを感じられるものの背面側の人間は逆に余計に暑くなる。結局のところ他の誰かに負担を押し付けてることでしかないわけだ。
しかし『霊の出現により気温が下がる』という話の場合はどこかが暑くなっているなんてのは基本的に聞かない。となればどこかを暑くすることなく気温を下げられるのではと俺も思ってしまう。
で、自由惑星の<星渡る風>の発見によって得られた物質の中に、
<熱を電気に変換する性質>
を持つものがあって、現在主流になっているタイプの空調機の原型が出来上がったそうなんだ。しかもその物質は従来の観測方法じゃ見付けられなかっただけで地球上にもごく少量ながら存在していて、それの働きで不自然に気温が下がる現象がごく稀に見られてその不自然さを<霊>という概念を用いることで納得しようとしていたと。
つまり<オカルトと称される現象>にもそもそも科学的な何らかの事象がそこにあって、それまでに判明していたことじゃ上手く説明できないから空想によって補い、<霊>をはじめとした<超自然的な何か>がそれを引き起こしてることにして自身の中に落とし込もうとしていたのがそもそもだったんだろうなあ。
実際には多くが<気のせい>だったり<ホラ話>にすぎなかったりしたものの、あくまでその時点では解明されていなかっただけの物理現象だったりというのも少なからずあったそうだ。




