キャサリン編 お化けの正体を知る
『人間として見てくれなくてもAIの方がよっぽど大切に接してくれるんだからあんな人間社会がそのまま再現されるよりは地球人社会製AIに支配されている方がマシかもしれない』
地球人社会においても実はそう考えている人間は少なくなかったりする。と言うか、政治や社会体制に興味のない者の大半は、
『それでいいんじゃないか?』
と思っているという統計もある。<統計>というヤツは質問の仕方などによっても結果が左右されてしまう実はあやふやなものではあるものの、それでもなんとなくの傾向については窺い知ることができるという意味じゃ必ずしも無価値というわけじゃないとのこと。
その点からも人間(地球人)というのは本質的に他力本願で、
『自分で考えたくない』
生き物なんだということが分かるかもしれない。だから俺みたいに延々と自分で考えようとする人間の方が少数派なんだろうなとは思う。だがそれでも高い知能を発揮することができる脳を持っている以上、それを使わないのはやっぱりもったいないとも思うんだ。野生の生き物は自身の能力をフル活用することで生き延びているわけだし。
『野生の生き物を見習え』
みたいな言い方をするつもりもないにせよやっぱり同じ<生き物>としては『もったいない』とも思ってしまうな。持ってる能力を使おうともしないというのは。
ただ同時に、『自分で考える』というのはなかなか大変な行為なんだろうなとも確かに感じるよ。『できれば避けたい』と思ってしまうくらいには。
そういう本音が『AIやロボットに支配されてもいい』という考え方に現れてるんだろうさ。
もっとも俺の場合はこうやって延々と考えること自体がある種のストレス発散と言うか<ストレスそのものを和らげる効果>があるからやれてるというのもあるのか。ストレスがかかる原因そのものについてあれこれ考えてその正体を知ることによって軽減するわけだ。
これはあれかな、
『お化け怖い』
みたいなのを、
『お化けの正体を知る』
ことによって緩和する感じに似てるのかもしれない。それを思えば人間(地球人)が科学を進歩させることによってオカルトの正体を暴いてきたのもそういうのが根底にあるのかも。いや、それ以上に『知りたい』『それが何なのか解明したい』というのが先に立つタイプの人間もいて、オカルトと呼ばれるものがなぜそうなっているのかを知ろうとし、もしそれが利用できるものであれば利用したいと考えたんだろうな。




