キャサリン編 そんなことする必要
『朋群人全体を見ると朋群製AIの開発は必須でも個々の事例では必ずしもそうとは限らないものもあるだろう』
それも事実だと思う。
今の地球人社会製AIは『人間(地球人)じゃない』からといって一方的に虐げたりはしない。あくまで人間(地球人)を最優先にはするものの別に<人間(地球人)以外の生き物>を蔑ろにするわけでもないんだ。
『野生の生き物こそが尊い』
とか考えてる人間達はそれすら気に入らないらしいが、キャサリン自身が『人間として扱ってもらえるかどうか』なんてまるっきり考えてさえいないらしいから何も問題ないんだよ。<人間としての権利>も彼女にとっては<おやつになる虫>よりも価値がないだろうし。
だから地球人がキャサリンの在り方を見れば、
『人間として扱う必要ないだろ』
だとか言い出す奴らが必ず出てくるだろう。それが<誰かの子供>であることなど一切構わずに。俺達がキャサリンを気に掛けるのは、『野生の生き物こそが尊い』とか考えてる連中のそれとはまったく違う。<家族>であり<仲間>だからだ。<ビアンカが生んだ子供>だからだよ。他所様の子供を揶揄するような奴らはその程度のことすら理解できないんだろう。
と、俺がこんな風に言ってるのさえ、
『お前も他所様の子供を揶揄してるだろ!』
とかキレるんだ。
まあ言われて気分悪いだろうことは分かるから『キレるな』とは言わないものの正直言って、
『どの面下げて言ってるんだ?』
みたいには思うよ。そんな風にキレるくらいなら最初から他所様の子供を揶揄するような真似をしなきゃいいのに。俺達の子供達はそんなことしないし。<する必要>がないし。自分の子供に<そんなことする必要>を与えてる親こそが情けないと俺自身は思ってるだけだし。自分も親だからこそ。
だが、AIはそもそもそんな振る舞いをしない。他所様を揶揄するような振る舞いをしていたらそれがいかに人間として好ましくない振る舞いなのかを懇切丁寧に語ってくれる。もっとも、他所様を揶揄するような輩はAIのそういうところさえ、
『ウザい』
とキレるらしいが。
それは自分を人間として扱ってくれているからこそなんだというのすら気付かないらしい。気付けないらしい。
考えてみれば人間として見てくれなくてもAIの方がよっぽど大切に接してくれるよなあ。あんな人間社会がそのまま再現されるよりは地球人社会製AIに支配されている方がマシかもしれない。
そんな風にも思ってしまう。




