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キャサリン編 脳に伝わる情報の共有

『電脳化技術が実用化された時に脳に伝わる情報の共有も試みられたことがある』


まあそれによって、


『他人の気持ちが完全に分かるようになるのでは?』


と考えたのかもしれない。そんなことを期待してしまう気持ちも想像できなくはない。また、


『他人が受けているストレスを客観的な数値として表す』


ことにも利用しようと考えていたようだ。


しかしこれは結局、研究者が思い描いていたような結果は得られずに終わったというのが現実だったらしい。


考えてみれば当然かもしれない。いくら他人の感覚を味わってみたところで、


『その感覚をどう解釈するか』


はそれぞれ個々人の感覚に依存するんだ。例えば何か不快なものを見た時の<不快感>を情報として提示されても、


『それをどうして不快と感じるか? どれだけ不快と感じるか?』


はどこまでいっても当人の感覚に依存する。


『これについてこれだけ不快に感じているというデータをどう解釈するか』


の時点で受け取り側に違いが生じてしまう。これじゃ結局のところ<客観的な判断>には繋がらないわけで。


にも拘らず、


『他人の記憶と感覚が自分の中にある』


という状況に曝されてしまい、<自他の境界線>が揺らぎ人格が崩壊してしまった事例が相次いだそうだ。これは俺にもなんとなく想像できてしまう気がする。


なんだかんだ言っても人間は、


『他者を慮る』


ことができればそれでいいんじゃないか? 他者の気持ちや感覚を完璧に理解できる必要はないと俺は思うんだ。シモーヌのことだって俺は慮りたいと考えてるし、彼女が考えてることをすべて理解できなくても何も困らない。


これは子供達についてもそうだ。


『子供の気持ちが分かりたい』


とは、それほど強く思わないんだよ。キャサリンに対しても同じ。そしてサディマに対しても。


彼の気持ちを慮るつもりはあっても理解する必要は感じていない。


地球人には、


『自分に理解できないものは排除しようとする』


悪癖もあったよな。そんなことをしていれば自分が排除されそうになっても文句を言えなくなるだろうに。


だいたい、AIすら人間(地球人)を完全に理解してない。人間(地球人)の心なんてそれこそ埒外のはずだ。なのに人間(地球人)に尽くしてくれる。


これはどういうことなのか。


もちろんそれは人間(地球人)がそういう風にAIを作ったからだろう。けれど人間(地球人)なんて理不尽で身勝手な連中を見捨てないでいてくれるようにAIを設計できたというのも実はすごいことなんだと思う。



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