キャサリン編 それだけの性能は
<サディマを保護するために出た部隊>が到着すると、
「コチラニ、ノリカエテ、クダサイ」
彼を乗せていたホビットMk-Ⅱが<キャノピーを付けた車椅子ロボット>を指し示しながら告げた。これにサディマも、
「分かった」
と素直に応じてくれた。緊急避難として二機のホビットMk-Ⅱを組み合わせたものはさすがに乗り心地などもほとんど考慮できていないわけで、<キャノピー付きの車椅子ロボット>の方が一見しただけでも乗り心地はマシそうに感じられるだろう。非常時とはいえその辺りは考慮できる限りは考慮したい。
さすがに<高級な自動車のキャビン>までは用意できなくても。
サディマの方もさすがにそこまでは期待していないだろう。まあアリアンを向かわせることができればもっと良かったんだがちょうど出払っていたし、たとえアリアンでもこの雷雨の中だと安全に運用できる保証もないし。機体が大きい分、受ける影響も大きいわけで。
加えてアリアンに万が一があった場合、損失が大きすぎるという面も確かにある。だから状況によっては出動を拒否される可能性もあるんだよ。唯一の地球人である俺に不利益が生じる可能性があると判断されれば。
これはあれだ、エレクシアに俺の子供達を守ってもらおうとしてもまず俺の安全が優先されたのと同じと言えるのか。
この辺りの解釈でAIと揉めても理屈ではAIには到底敵わない。それで無駄な時間を浪費するよりは次善の策を考えた方がよっぽど早い。ドーベルマンMPMやホビットMk-Ⅱは修理も可能だし替えもある。そちらで対応できるならそうする方が確実だ。
地球人社会でも人間以外の動物を保護するために人間に犠牲が出るような対応はしないわけで。
『野生動物を駆除するくらいなら人間の方に犠牲が出た方がマシ』
みたいなことを<環境テロリスト>は口にするが、AIとAIに制御されているロボットは絶対にそんなことは承諾しない。
まずは人間を守るし、野生動物の保護を強く要請された場合は最悪でも『自分を犠牲にする』ことで人間と野生動物を守る。優先順位は変わらないんだ。地球人社会であれば<代わりのロボット>はいくらでもいるわけで。
だがここにはアリアンの代わりはいない。回転翼機はすでに十数機が稼働しているがアリアンには遠く及ばないし。
だから十分にリスクが少ない状態か、唯一の地球人である俺に危険が迫ってる状態でないとすんなりとはいかないんだ。
とはいえ、今回の事例であればドーベルマンMPMとホビットMk-Ⅱで事足りると思う。もうそれだけの性能は実現できてる。




