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キャサリン編 プロローグ

キャサリンは<アラニーズ>である。


地球人そのものにしか見えない部位はあくまでも<頭部>でしかなく、腰に見える部分が<アラニーズの胸部や胴部>と繋がっていて切り離すことはできない。


一応、<地球人そのものにしか見えない部位>だけでも生理機能のほとんどは賄えていて、現在の地球人社会の医療技術を総動員すれば切り離すことも不可能じゃないとは推測されている。しかし俺達としてはそうする必要があるとは感じていないんだ。オリジナルは地球人でありアラニーズとしてここに顕現してしまったビアンカはショックも受けていたものの最愛の想い人である久利生(くりう)に自身のすべてを受け止められてからは今の自分を受け入れることができて、心穏やかに生きられている。


そんなビアンカを母として生を受けたキャサリンはそもそも今の自分に何の疑問も抱いている様子がなかった。それは彼女の知能が必ずしも高くないことで現状を理解できていないからというのもあるかもしれないが、同時に彼女の周囲の人間の誰もアラニーズである彼女について否定的な印象を持つていないというのも大きいのだろう。


アラニーズという種の存在そのものが『当たり前』だからだ。


これは最初のアラニーズであるビアンカのおかげというのが大きいかもしれない。ビアンカが<危険な怪物>じゃなかったことで、


<アラニーズという種が危険な存在ではないという認識>


が定着したからだろうな。<例の不定形生物を基にして顕現したキメラ個体>によく見られる<複数の遺伝子を持つことで可能になった自家受精>によりビアンカだけを親として生まれたケインとイザベラとキャサリンは、ケインを除いていささか激しい気性の持ち主であることも事実ではあるものの、しかし同時に家族や仲間というものを認識できることから十分に<互いに触れ合える距離での共存>が可能だった。


対して肉体的にはほぼアラニーズと変わらないはずの<ヒト蜘蛛(アラクネ)>はそういう認識が一切持てずただただ<近距離での共存は不可能な危険な猛獣>でしかないという事実と比べても非常に大きな違いである。


とはいえ、キャサリンは他の人間と親しげに関わるということはせず、基本的に一人でいることを好んだ。<ドウ>を除いて。


ドウは人間のサポートを主目的として作られた汎用ロボット<ドーベルマンMPM>の十六号機でキャサリンが唯一接近を許している存在である。


その様子はまるで<(つがい)>のようでさえあった。



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