未来編 ぶつかり合った方が上手くいく
自身の感情や執着に囚われて振り回され他者を傷付けるような振る舞いをしてしまう人間の姿を描いたフィクション作品を『深い』と評して感銘を受けつつそこから学ぼうとしない人間がいることについて、
『人間とはそういうものだ』
と諦めてしまうのも多いかもしれないが、俺はそれについて、
『そうじゃない』
『それじゃ駄目なんだ』
と感じるからこそ自身の感性に従って自分なりの努力をしようと考えてるだけでしかない。俺と同じことを他人もしてくれるとまでは、させようとまでは、そもそも思っていない。
何よりどんなにそれを望んだところで他人が自分の思ってる通りにしてくれるとは限らない。それで苛々したりしてたんじゃ自分で自分を傷付けてるのと同じだと思う。だからこそその辺りは割り切って受け流してしまった方がいいように感じるんだ。その辺りも『自分のため』なんだよ。
『自由を尊重する』みたいな言い方をすると<綺麗事>のように感じるかもしれないにせよ、本質は『自分のため』なんだ。『自分以外の人間を自分の思い通りにはできない』という現実を言い換えただけでしかない。それを綺麗事風に言うから齟齬が生じるんじゃないかとも感じるな。
確かに綺麗事風に言うと耳に心地好かったりするにしてもそれで反発を招いてたりしたらそれこそ本末転倒だ。そういうのもわきまえておかなきゃと思うんだ。
他人が自分の思ってる通りに振る舞ってくれないことにいちいち苛立って感情的に強い言葉を使うのもいたが、それで結果的に相手と喧嘩になってたのも見たことがあるよ。
仕事で普段からあれこれ口煩く指示してくるのがいたんだが、俺はそれを聞き流すように心掛けてたんだが、ある時、
「お前は要するに自分の思ってる通りにしないのが気に入らないだけだろ!」
とキレて食って掛かったのがいたんだ。
『自分の思ってることをちゃんとはっきりと口にしてぶつかり合った方が上手くいく』
なんてことも言われてたりしたが、そうやって本音をぶつけ合ったのが陰ではお互いに貶し合ってたのも知ってる。それで本当に『わだかまりがなくなる』なんてのはフィクションの中だけの話だと感じるよ。元々仲の悪い者同士がそれによって打ち解けるなんて、必ずそうなるとは限らない。『そういう事例もないことはない』というだけで。
それで上手く行けばいいものの、そんなことを真に受けて衝突して余計に拗れた場合には誰が責任を取ってくれるんだろう。誰も責任なんか取ってくれないよな。




