未来編 内向きに完結してしまう
しかも、
『スタンドアロンでありつつネットワークの一部でもある』
AIは、情報参照速度も人間の比じゃない。ネットワークにアクセスできる状態であればそこにある情報はほぼすべて『頭の中にある』のと同じだからな。人間のインフルエンサーがネット上にアップした発言の類も一瞬で掘り起こすことができ、それら<過去の発言>と<現時点での発言>の矛盾点を確認することなんて文字通り『朝飯前』だ。
しかも、
『あるインフルエンサーが<故事>や<説話>を引用して語った内容が実は間違っていた』
なんてことも容易く見抜くことができる。日常的にその辺の<誤用の類>については端末のAIなどが注意喚起してくれたりするんだが、それを疎んで『余計なことは言うな』とミュート設定してる人間も多く、間違ったまま発信してしまうことも少なくないんだよ。特に、
<自身の知見や考えをひけらかしたいタイプ>
だとその傾向が強いとのこと。で、そうやって間違ったまま発信してしまったのをツッコまれると。そこで素直に間違いを認め引き下がればいいものをそういうタイプは『自身の間違いを認める』ことができないのが多いからか屁理屈を並べて、
『自分の方が正しい』
と強弁するんだよ。それがまた最高に『カッコ悪い』わけで。ゆえに結果として、
『自身の発言を無批判に受け入れてくれる特異な存在だけに囲まれていい気分に浸る』
形になり、内向きに完結してしまうんだ。となれば当然、大きくは広がらない。<AI・ロボット排斥主義者のコミュニティ>も要するにこれだな。同じ考えに固執できる者達同士が寄り集まって『自分達は正しい』と思いたいんだろう。そういうことができるのも実は、
『今の地球人社会の仕組みのおかげ』
なのになあ。
『多様性を認めそこに生じる齟齬についてはAIやロボットが吸収してくれる』
からこそ成立するんだよ。そういうのがなかった頃にはそれこそ<弾圧>や<迫害>といった行いが横行していたと聞く。
<多様性>というものを毛嫌いする人間(地球人)もいまだに多いが、実際にはそのおかげで自分達の存在も排除されずに済んでいるのにな。そうじゃなきゃ主流になった価値観にそぐわない者は排除されるはずなんだ。実際にそれを感じることはあったんじゃないだろうか。
『好き嫌いがある』のは別に構わない。『自分の価値観にそぐわないものをなるべく避けたい』のも今の地球人社会では許されている。だが『自分の価値観にそぐわないものを一方的に排除する』ことは認められないんだ。




