未来編 肌触りが良すぎる
ちなみにイザベラとキャサリンは、なんとなく面差しに印象はあるもののビアンカとはそこまで似ていない。少なくともケインに比べれば明らかに別人だ。しかしケインは本当にビアンカに似ているとのこと。コーネリアス号の<個人ストレージ>に保管されていた、
<十代後半の頃のビアンカ>
の写真と比べてもほとんど見分けがつかないくらいには。しかもビアンカが言うには、
「たぶん体つきとかもそっくりなんです」
と。だからこそ早々に服を着るようになってくれたのはありがたい。ビアンカにしても、
『子供の頃の自分の裸を衆目に晒す』
のとほとんど同じなわけで。もちろんここには<裸>というものをそこまで気にする者はいないもののそれでもな。どうしても<地球人としての感覚>を持つ者であれば多少の<気まずさ>はある。ビアンカもそうだ。それを、
『そんな些細なことを気にするな!』
とは俺は言いたくない。だから、
『他人の裸を見せられたくない』
と考える者がいればそれについても対応を考えないといけないだろうな。今の時点ではそこまで気にしてる者がいないから成り行き任せにはしているもののケインについても本人が自然と服を着るようになったから何か具体的な対応をする必要もなかったものの今後はどうなるか分からないのが正直なところだ。
しかしイザベラ達が『服を着たがらない』のは地球人の子供のそれとはたぶん本質的に違う気がする。光や灯の時も、服を着せようとして、
「お〜! 上手上手♡」
と褒めて楽しげな様子でいい印象を持たせようとしたんだが、どうにも<化学繊維の肌触り>が気に入らなかったのかすぐに脱いでしまうんだよ。
俺がいた当時の地球人社会の<化学繊維>は、下手な天然繊維よりよっぽど安全性が高く機能的だったんだが、
『肌触りが良すぎる』
のが気に入らなかったのかもしれない。何か不自然なものを感じてしまったのかもしれない。まあ『自然じゃない』のは事実なんだが。何しろ<防汚性能>が高く水洗いだけでも十分に汚れが落ちるからな。天然繊維じゃこうはいかない。と言うかその辺は昔の化学繊維も同じか。いずれにせよ天然繊維じゃ有り得ない機能を持ってるのは事実であり、その辺が肌に馴染まなかったのかもとは思う。
だからこの地で得られた天然素材を用いた繊維を使って新たに生地を作りそれを服に仕立ててるんだよ。これで光も灯も抵抗なく服を着るようになってくれた。玲やメイも同じだな。まあそれでも慣れるまでには時間がかかったが。




