未来編 すごいパフォーマンス
<陸上競技>や<格闘技>なんかの場合だと、ロボットであるメイトギアが人間を上回るパフォーマンスを見せるのは当たり前だな。要人警護仕様のエレクシアどころか標準仕様のセシリアでさえ生身の人間を軽く上回るパフォーマンスは発揮するんだよ。
凶が群れを率いて俺達を襲った時にも銃やナイフを手にして俺なんかよりよっぽど戦力になってくれた点からもそれが分かる。エレクシアの指揮があったとはいえ機体そのものは標準仕様だしな。
<フィギュアスケート>なんかも、いわゆる『芸術性が高い』部分を除けば単純に<身体能力に裏打ちされたパフォーマンス>がものを言うわけで、生身の人間では実現不可能とされる<七回転ジャンプ>だって、それなりに高性能なメイトギアであれば再現して見せるそうだ。もっとも機体性能に物を言わせてジャンプの<高さ>も<距離>も稼げるからそりゃ七回転だってできて不思議はないだろう。エレクシアだって幅二十メートルの河を飛び越えてみせるしな。要はその間に七回転すればいいわけで。
ああでも、『横回転しつつ二十メートルを飛ぶ』のはさすがに無理か。しかし高さ二メートル幅五メートルのジャンプ中に七回転するくらいなら余裕な気がする。
そもそもロボットであるメイトギアは、それ用の調整さえ行えばどんな高速回転中だろうがどんな姿勢になろうが上下の感覚も失わないし周囲の景色さえはっきりと認識できる。生身の人間が勝てるはずがないんだ。
加えてメイトギアなら見た目も自由自在だ。人間が美しいと思う姿を持たせ人間を上回るパフォーマンスを発揮するのを観ていれば、
『すごいジャンプを跳んでみせるだけが価値なのか?』
という気になってくるだろう。実際、メイトギアがオリンピックの金メダリスト以上の滑りを見せたからそちらにばかり注目が集まってしまって<人間がするフィギュアスケート>の人気が落ち込んでしまった時期があったらしい。単純に、
『メイトギアのすごいパフォーマンスの方が見ていて楽しいからもうそっちでいいんじゃないかな』
という感じになってしまったとのこと。しかし、
『ロボットが人間を超えるパフォーマンスを発揮するのは当たり前じゃん。そういう風に作られるんだから』
『作り物がどんなにすごいことをして見せたってそれはフィクションと同じ』
そう感じる人間もいて、
<人間の限界に挑戦すること自体に価値を見出す者達>
は挑戦を諦めなかったんだ。そうしているうちに改めて認められていたそうだ。




