別にこの世界全部を(変えてしまうつもりもない)
今、俺達が住んでるこの場所には、一つの新しい<世界>ができようとしてるのかもしれない。人間でもなく、獣でもない者達の為の小さな世界が。
もっとも、それが今後も続くものかどうかは正直分からない。俺やシモーヌが生きてて、光莉号やエレクシアやセシリアやイレーネが機能してて、この<小さな世界>が維持される状態が保たれるならひょっとするとひょっとするかもだけどな。
とは言え、どんなに高い耐久性を持ってても、機械だっていつかは朽ちる。メイトギアのメンテナンス用の資材だって決して無限じゃない。まあ、今の様子なら節約すればまだ千年くらいはもつとしても、な。
先のことはどうなるか分からないが、それはそれで考えるしかないのか。
シモーヌの手伝いをしたり、エレクシアやセシリアやイレーネと一緒に家のことをしたりしている光と、子供ら同士で遊んでる灯、焔、彩、新、凛。
他の子供達とは馴れ合うことなく、相変わらず気配を掴ませない丈はたぶん、遠からず巣立っていくだろう。
どちらも幸せになって欲しいと思う。
俺にとっては大切な家族だから。
長く病気で苦しんだ挙句に息を引き取った妹のことを思うと、余計にそう思うんだ。
俺は生まれ変わりなんか信じちゃいないが、ますます妹にそっくりになっていく光のことを見てたりすると、あの子の生まれ変わりなんじゃないかって思いたくなることもある。
今じゃ、妹のことを思い出そうとすると、その姿が完全に光とダブってるんだ。と言うか、光の姿でしか思い出せない感じかな。
決して愛想良くはない光とは言え、それもやっぱり人間の感覚での話なんだろう。彼女はとても優しいし、俺のことも好きでいてくれてるのも感じる。それでいて、ちゃんと自分で生きてるんだ。
自分で選択して、ここにいるんだっていうのを感じるんだ。
なんか、妹に、さらに下の子ができて<お姉ちゃん>になったみたいな印象もある。もしかしたら有り得たかもしれない光景、か。
シモーヌの手伝いと家事が一段落して、光がイレーネに絵本を読んであげている。そこに灯と新と凛もいて、少し離れたところから焔と彩がその様子を窺っている。
あたたかくてほっこりとした光景だ。
『ああ、いいなあ……』
なんて、じんわりとした気分になる。
自然として正しいか間違ってるかなんてのもどうでもよくなってくる。これはこれでありってことでいいよな。
前にも言ったと思うが、俺は別にこの世界全部をこんな風にしようと思ってるわけじゃないし。
誉や明や翔の生きている場所まで変えてしまうつもりもないし。




