未来編 親のコピー
子供は親の振る舞いを真似ることで人間としての生き方を学んでいくものの、別に<親のコピー>ってわけじゃない。久利生がどんなに学業面で優れていたとしてもまったく同じになるわけじゃない。<生まれつきの資質>や<生まれつきの気性>というものも俺は否定してるわけじゃないんだ。それの影響のみで決まるわけじゃないと思ってるだけで。
未来や黎明はまさしくそれを表す実例だと思う。顔立ちなどから久利生の血を間違いなく受け継いでいるとは感じるものの<学習に対する姿勢>は似てなさそうだ。
しかしこれについて久利生は、
「僕は別に『勉強が好き』だったわけじゃないよ。自分が置かれてる環境的にするしかなかったからしてただけで。たぶん、平凡な一般家庭に生まれ育っていたらすごく凡庸だっただろうね。意欲そのものがそれほどなかったわけだし」
と語った。なるほどそういう意味では、
『素の本来の久利生に似ている』
みたいに言えなくもないのか。環境に強いられたとはいえそれをちゃんと活かせるだけの素養は持っている久利生をただのびのびと育てれば未来や黎明のようになっていた可能性が。まあ<気性>の点でクロコディアやアラニーズ由来の資質を持っている二人とまったく同じにはならないだろうが。
そうだな、<生来の資質の影響>ってのはそういうことなんだろう。それでいて激しい気性を生来の資質として持つ未来も黎明もちゃんと家族を大切に想ってくれている。
さらにイザベラも。
知能の面でハンデを持っているのは確実なイザベラだが、ルコアのところで未来や黎明や蒼穹と一緒に勉強すること自体は嫌いじゃないんだよな。対してキャサリンは今も本当に片言でしかしゃべれないしそもそも普段はしゃべろうともしない。かろうじて人間として自身の身内は認識しつつ、必要とあれば最低限コミュニケーションも取りつつ、限りなく野生に近い生き方をしている。そしてそれをビアンカも久利生も認めている。ルコアも認めてくれている。最初はさすがに納得はしてなかったようだけどな。心配してたみたいだけどな。でもキャサリン自身が逞しく強かに生き延びて見せてるから納得するしかなかったわけだ。
一方、イザベラは『ワタシトツガエ』と挨拶代わりに口にするが肝心の未来は、
「はいはい分かったから座れ」
と慣れた様子でいなしていた。すると彼女も、
「ワカッタ」
素直にその場に座る。体の構造上、椅子に座らなくても<地球人そっくりの部分>がちょうど椅子に座ったような位置になるんだよ。




