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陽編 お疲れさま、凱

エレクシア達は俺の家族に異変があれば伝えてくれるが、常に完璧にリアルタイムでとはいかないのも事実だった。当然のこととして<優先順位>はあり、<人間(地球人)>じゃない俺の家族や仲間達のことははっきり言って優先順位は低い。


もちろん俺が大切にしていることは認識してくれているから蔑ろにすることはない。でもまるでエアスポットのようにして抜け落ちてしまうことはある。


コーネリアス号側でももちろんモニターしているものの、本当にこういうことは起こるんだ。


だから別にエレクシア達を責めるつもりはない。もちろんシオやレックスやアンデルセンらのことも責めたりしない。それに、<寿命による自然死>と言ってもいい場合には蘇生も試みないと決めてあるからな。そこまでシビアにモニターする必要もないわけで。


だから間が悪いとこういうこともあるさ。誰のことも責める必要はない。それに(かい)は天寿を全うし仲間達に囲まれつつ穏やかに逝ったんだ。決して<緊急事態>というわけでもない。<不幸な最期>というわけじゃない。


そして仲間達の傍で二十四時間過ごし、蘇生の可能性が完全になくなってからこれまでと同じくアンデルセンが迎えに出た。(かい)の仲間達ももう慣れたもので、警戒はするものの騒ぐこともない。恭しく(かい)の亡骸を抱き上げる様子を遠巻きに見ていた。見送ってくれた。単にアンデルセンを警戒して様子を窺っているだけじゃないのが不思議と分かった。


それくらいの関係だったわけだ。自分以外の命に対しては極めてドライでシビアな姿勢で臨むのが当たり前の野生においてここまで気にかけてもらえるとか、やっぱり(かい)はすごいよ。自慢の息子だ。しかも自らの生をしっかりと生き切ってくれた。


「お疲れさま、(かい)


彼の仲間だけじゃなく、俺をはじめとして皆が画面越しに見送る中、(せん)の隣かつ(そう)の隣に掘られた<寝床>にそっと寝かされた息子に声を掛ける。もう彼には届かないのは分かっていても、本心からの労いの言葉は自然と口を突いて出た。言わずにはいられなかった。


「お疲れさま」


「ゆっくり休んでね」


(ひかり)とシモーヌも声を掛けてくれる。さらにビクキアテグ村では、


(かい)……ありがとう……」


ビアンカが涙ながらに礼を口にした。彼女にとってはアラニーズとしての今の自分を受け入れるための心の支えでもあったからな。(そう)と共に。だから感情が高ぶってしまっても当然だ。こうして俺達はそれぞれの想いを胸に、彼を見送ったのだった。



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