陽編 ミスを起こしてもらってる
なんにせよ一応<仕事>として受け取った物資を下ろし大まかな仕分けまでは陽と和にもしてもらう。
光莉号のロボットアームが箱を下ろしてくれて、二人が開梱する。中には<オリコン>や<クーラーボックス>がぎっしりと詰められていた。
一度にもっと大量の食材などを輸送する場合は専用の<保冷コンテナ>のようなものを使えばいいんだろうが、今はまだそこまでじゃないからこっちの方がコスト的にも効率がいいんだよな。
そして陽と和がそれらを取り出し、光とセシリアとイレーネが検品する。伝票の内容と品物がちゃんと一致してるかどうか。まあ、送り主もロボットだから本来は<ミス>はしないんだが、『ミスに遭遇しそれに対処する』ことを経験してもらうためにランダムにミスを起こしてもらってる。とはいえ今回は問題なかった。
なお、ミスがあった時も、誰も感情的になったりもしない。その必要がないからな。人間が行うことというのは程度の差こそあれ必ずミスが伴うものだ。それにいちいちキレていたら精神衛生上も好ましくない。
まあ今の地球人社会はロボットも含めた二重三重のチェックが行われるからミスがそのまま外に出ることはほとんどないんだけどな。あくまでも内部でのミスにとどまるように対処はされている。企業であれば当たり前のことだが。なにしろミスがそのまま社外に出てしまえばそれこそ信用問題にさえなりかねない。
ここ朋群に出来上がっていくであろう社会においてもその辺の仕組みについては導入するつもりだからそこまで<表に出るミス>は多くないだろうとは思うものの、人間が行う範囲内では、
『ミスは起こるもの』
というのは分かっておいてほしいし、敢えて用意してる。そして二人ともミスに直面した時にも鷹揚に構えてくれていた。それでいい。大したものだよ。俺の孫達は。
『ミスをしたら叱るべきだ。それが本人のためにもなる』
みたいなことを言う人間は多いが、確かにミスをしても何の指摘を受けることもなくただスルーされるだけじゃ<成長の機会>にすることは難しいだろう。だがそもそもミスについて『叱る』人間も本当にただ叱ってるだけか? 自分のストレス発散に利用してたりしないか? そうじゃないと言うのならどうして感情を前に出す? 不愉快そうに嫌味を言ったりキレたりする? ミスについて指摘するだけなら<感情>は別に必要ないはずだよな。
なるほど感情を乗せて強く指摘してくれないとピンとこない人間もいるのかもしれないが。




