陽編 優秀な人材
受け取る物資の確認も、陽と和は手分けしててきぱきとこなしていた。本当に真面目で勤勉で優秀な人材だよ。
かといって、元々の能力が飛び抜けて高いというわけでもない。身体能力は野生のパパニアンに匹敵するとはいっても厳密にはやや劣る程度だし、知能だってシモーヌやシオやレックスに比べれば凡庸だ。でも、役目に対して真摯で誠実なんだよ。その辺は<資質>に関係なく当人の心掛けでどうにかなる部分だよな。
なのに地球人社会ではそういうところを蔑ろにしてる者も少なくなかった。仕事に対して誠実さを欠き、結果として高い評価をもらえなかった者がな。
<能力>そのものはそこまで他人に比べて劣ってるわけでもないんだよ。むしろそこそこ能力が高いのもいた。にも拘らず仕事に対して真摯じゃないから能力の割には信頼もされないし高い評価ももらえないんだ。さらに、
『自分は他人よりも劣っているから』
と自らを卑下してふてくされたようにやる気を見せないのもいたが、いやいや、能力的には凡庸でも何も問題ない。一般的な仕事においてはそんな特別な才能や資質ばかりが求められてるわけじゃないはずなんだ。平均的で凡庸な能力があれば問題なくこなせる仕事の方が世の中にはよっぽど多いんだ。
確かにそういうものが求められる仕事もあるだろう。職場もあるだろう。だがすべてがそうじゃない。そんなところばかりなら要求されるアベレージに達してる人間の方が少数だろうし、それじゃ人材の確保もままならないだろう? でも<普通の仕事>に就くのは凡人でいいんだよ。凡才でいいんだよ。<天賦の才の持ち主>でなくていいんだ。ただ真面目に真摯に仕事に向き合ってくれればそれで成り立つはずなんだ。なのに仕事に対して不誠実な態度を見せていたら、能力について語る以前の問題じゃないか?
そういう者が、
『自分の能力が低いから認めてもらえないんだ!』
とか嘆いていたら、
『いや、そういうことじゃないだろ』
と思ってしまうな。問題なのは<能力>じゃない。<仕事に対する姿勢>だ。真面目に真摯に向き合っていれば十分にこなせるものをこなしていなかったからじゃないのか?
俺も親として自分の仕事については誠実に向き合う姿勢を実際に示さなきゃと、今は余計に思う。光も灯も自分の仕事を真面目にこなしてくれてるが、錬慈にもそうなってもらおうと思えばいい加減なことはできないと思い知らされるよ。
光の子供達である陽と和の姿を見ていればこそな。




