陽編 素の自分で十分に
だから無闇に見栄を張る必要もないしカッコつける必要もない。そんなことをしなくても二人は十分にカッコいいしちゃんとしてる。<ファッション>については実用一辺倒の作業服を普段着にしてるから決して<オシャレ>とは言えないにしても、それで二人の価値が下がると考える者もここにはいない。
ただ、<肌ケア>については子供の頃からやってたのもあって『そうするものだ』と思ってるようだ。まあ本当に軽い基礎的な程度のだから、<洗顔や入浴の一部>という認識なんだろう。
『顔を洗う時に洗顔ソープを使う』
とか、
『風呂に入ったら体を洗う』
程度の感じかな。
光や灯の時もセシリアがやってくれてたとのこと。俺は気付いてなかったが。
と言うか地球人社会でも割と当たり前のことだから敢えて意識してないと言ったほうがいいかもしれない。メイクとなるとさすがに話は別だが。
ちなみに光も和もメイクはしない。紫外線対策のクリームを塗る程度だ。まあそれがある程度はファンデーション的な効果もあるから肌の艶が良くなったように見えるけどな。
そのくらいか。
メイクをすることで自分の価値が高いように見せる必要がないんだよ。光のパートナーの順も、灯のパートナーの久利生も、あくまで<本人>を愛してくれてるし。
きっとメイクをして華やかな感じになればそれはそれで褒めてくれるだろうが、
『そうしなければ価値はない』
ってわけじゃないしな。
とにかく今のこの世界には<虚飾>が必要ないんだ。地球人社会ではまず自分を見てもらうためにそれが必要だったりしたが、ここじゃそもそも人口が少ないから、
『その他大勢の中で自分を際立たせて見付けてもらう』
なんてことも必要ないわけで。
野生の生き物も自分を飾ってアピールしたりするから<飾る>ことそのものは別に好きにすればいいんだろうが、
『自分を見てもらって知ってもらってそこから先はどうするか?』
を考えたらやっぱり実態が伴ってない<虚飾>じゃ駄目なんだろうな。『こんなはずじゃなかった』『思ってたのと違った』『騙された』と思われたら意味ないだろうし。まあ実際には地球人社会においてそういうのはありふれてたのか。俺自身はそれどころじゃなかったから気にしたこともなかったんだよなあ。
なんにせよ<素の自分>で十分に通用するのが今のこの世界だ。<パートナー>ができるかどうかはまた別の話ではあるものの少なくとも虚飾など用いなくても自分の存在は認めてもらえるからな。




