陽編 個人的な感想
陽と和と麗は、今日は少し遠出してもらうことになる。というのも、ホビットサンク村まで物資を届けて代わりの物資を受け取ってもらうんだ。ローバーで。
通常はハチ子を使って物資のやり取りをしてるんだが、こうやって人の手でもそれができるようにちゃんと演習を行うようにしてるんだよ。これまでにも何度もやってることだから陽も和も手慣れた様子で準備してくれている。
行き先はアリゼドラゼ村でもいいんだが、麗が一緒だからな。パパニアンであるレトやルナがいるからいろいろ繊細な対処が必要になるし、その辺りも対処そのものは可能であっても無理にリスクを負う必要もないだろ。それに、なにより新の最後のこともあるから、なんとなく気乗りしないというのはある。
ちなみにレトとルナはちゃんとパートナーになっていて、しかも仲がいい。年齢的にもパパニアンとしては円熟期に入ってる。ただ、子供はまだできてない。どちらかに原因があるのかそれとも両方にあるのか。これも実際には完全な野生のパパニアンでもそれほど珍しいことじゃないんだよ。
『すぐ子供ができるわけじゃない』というのは特に猛獣系の獣人に見られる傾向ではあるもののパパニアンでも割とあることだった。できる時はすぐに何人もできたりする一方で、できない時にはなかなかできないんだ。この辺りは地球人の遺伝子が影響してる可能性はあるか。
<種族としての地球人>は増えすぎたからな。しかも老化抑制技術の実用化で子供を産める期間がはるかに長くなった。だからポンポン子供ができるととんでもない人口爆発を起こす可能性もある。
しかも『妊娠しにくくなった』時期と『老化抑制処置が浸透した』時期とがまあまあ符合してるもんだから、
『人口調節のために総合政府が老化抑制を隠れ蓑に遺伝子操作を行ってる』
なんてことを口にする者達も現れたりしたそうだ。そしてその手の<陰謀論>は俺が地球人社会で暮らしていた頃にもそこそこ蔓延っていて地球人という種族の厄介さを思い知らされる事実だった。
とはいえ、誰もがそんな陰謀論にはまるわけじゃないのも事実なわけで、一面だけを見て地球人類を見限るのはおかしいと俺は思ってる。フィクションの敵役がなにやら『人間の在り方について正論めいたことを口にして主人公を戸惑わせる』なんて描写があったりするが、それすら所詮は<個人的な感想>にすぎないんだよな。
『その敵役が個人的にそう思ってるだけ』
でしかないんだ。




