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陽編 ロボットと大差ない存在

だが、<ゲームの中のゾンビやモンスターやクリーチャー>も、AIによって制御されている存在だ。


『実体としての体を持つか持たないか』


の違いだけで実際にはロボットと大差ない存在なんだよな。まあ、制御に用いられるアルゴリズムのレベルが桁違いではあるにせよ、本質は変わらない。


だからラブドールに対して加虐的な振る舞いをするのも、ゲームでゾンビやモンスターやクリーチャーを攻撃するのと同じことのはずなんだ。それこそ『実体としての体を持つか持たないか』の違いだけで。


不思議なもので人間は<画面の中だけの存在>と<実体としての体を持つ存在>とでは<本質的に同じもの>と認識できない場合が多いらしいんだよな。画面の中だけの存在に対してよりも実体としての体を持つ存在に対しての方が強く感情が揺さぶられるらしい。それはまあ、視覚や聴覚だけでなく『触れる』ことができる分だけより明確な実感があるからと言えるかもだが。


加えてゾンビやモンスターやクリーチャーはあくまで<敵>だからというのもあるのか。


しかしそれでも、


『人間が意図的にそういう役割を与えた』


だけでしかないんだよな。別にゲームの中のゾンビやモンスターやクリーチャーが自ら意思を持って敵対してるわけじゃない。にも拘らずだ。


実にいい加減なものだよな。そういう意味でも俺はラブドールの扱いについては割り切らないといけないと思ってる。実際に触れることができてもあれはあくまで<バーチャルリアリティ>なんだ。


とはいえ、だからこそ<代償行為>として成立しているという面は確かにあるのか。ちゃんと手で触れることのできる人間のようなものがそこにいるからこそ成立してるんだ。


もちろん中には代償行為では満足できずに犯罪に走ろうとする者もいるが、当然ながらその兆候は記録されていて実行に移そうとすれば即座に対処されるけどな。極めてセンシティブなプライバシーの問題ではあるもののAIには関係ないし『人間を守るために罪を犯させない』という目的にも合致するからなあ。


それでもなおまるで落とし穴にはまるかのように実際に事件は起きてしまったりするから、終身刑を言い渡されて刑務所暮らしをしている者もいる。それについては同情する気にまったくなれない。何重にもハードルは用意されているのにそこで思いとどまらず自戒せず事に及んでしまうような奴を許そうとは思わない。そんな奴はロボットしか周りにいない環境で一生を過ごしてもらおう。



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